100%は目指さなくていい

日本の企業では長時間働く人のほうを評価しがちですよね。H&Mに入社したばかりの人もそんな人が多いので、その意識を変えてもらわないといけない。マネジャーが残業ばかりしていると、若い人たちが、「あんなに残業しなければいけないなら、昇進したくない」と思ってしまうでしょう。

業績を上げ、なおかつ定時で帰るには、仕事のやり方を効率化することが大切です。私がこのポジションに就いたとき、グローバルの人事担当者に、「手帳を見せてくれ」と言われたことがあります。当時の私は一日中、ミーティングの予定でぎっしり。「スケジュールに会議を詰め込まないように」と注意を受けました。なぜなら私の役割は、「いつでもみんなが相談に来られるようにしておくこと」だからだと。そのとき私は自分に期待されていることをようやく理解しました。

【写真上】9月に開かれた新宿店のリニューアルオープンのパーティーで。抽選で選ばれた一般客も参加。【写真下】ストアでは、店長から自慢話を聞くようにしている。「ダメな点は本人が一番よくわかっているから」

それまで、成果を出すには細かくコントロールしないといけないと思っていました。でもそれを手放して、みんなのことを信じて権限を委譲し、できていないことがあればフォローする。つまり、コーチするのが仕事なのです。

H&Mには「Eighty-Twenty(80-20)」という法則があります。つまり最も重要な20%の仕事にフォーカスすれば、それだけで80%の結果につながる。そして、100%は目指さなくていいという考え方です。完璧を目指しがちな日本人には、最初はちょっと受け入れにくいかもしれません。

私が入社したばかりのとき、あるTシャツが全世界で何枚くらい売れそうか予測し、生産枚数を決めるよう言われました。私が「リサーチをして、パワポで資料を作るのに2、3日かかります」と答えると、「資料などいらないから1時間で決めてくれ。どういう考えでその結論までたどり着いたか説明してもらえればいい」という。

仕方なく、「去年はこれくらい売れました。今年は販売に力を入れるから、これくらい増やしたい」とベーシックなロジックを話してみると、「OK。それでいい」。

びっくりしましたが、それがいまの私たちのやり方になっています。