社員の成功を支援する人事

セールスフォース・ドットコムに移ったのはお声をかけていただいたのもありますけど、「3.11」も背中を押しました。東日本大震災が起きた直後、キャンディーやガム、チョコレートを用意して、いつでも被災地に送れる態勢を取っていました。ところが、製パン会社などには農水省から「パンを出してください」と依頼があるのに、同社には来ないんです。嗜好品は救援物資としては二の次になってしまうのですね。それを残念に思ううちに、もっと日本の役に立ちたいと考えるようになりました。

そんなとき声をかけてもらいました。セールスフォース・ドットコムは政府のエコポイント申請のサイトを1カ月でつくった実績がありました。他社が何カ月もかかると難色を示したサイトです。他にも、震災後の保険の求償サイトを突貫工事で仕上げるなど、このテクノロジーがあれば日本を変えられるんじゃないかと思えました。そういうお話を聞きながら、そういえばスタンフォードに留学中にできた会社だったなと思い出し、同時にシリコンバレーらしいオープンな文化を感じたので、ぜひここで仕事をさせてくださいとお願いしたのです。

手放せない仕事道具:スマートフォン。スマホからも「Chatter(チャター)」が使え、どこにいても仕事が可能。

日本の名刺には人事本部となっていますが、グローバルでは「エンプロイー・サクセス(社員の成功)」部門です。この会社の心臓部分が「カスタマー・サクセス」ですから、それを支える社員もやはり成功していないとお客様に満足いただけるサービスは提供できないという視点です。わが社は、CRMで世界一を目指し、そこで働く人も世界一の成功を手にし、社会に貢献するという考え方がベースになっています。

その中核には「OHANA(オハナ)」のカルチャーがあります。ハワイの言葉で「家族」を意味し、社員もお客様もパートナー様もベンダー様も、関わる全ての人は家族だから大事にしなければいけない、感謝の気持ちで接しなければいけないという文化です。人事も家族をつくりあげるためにいろいろなことをやるというスタンスです。