結婚や出産で退職や休職するのでは……と不安な面も

――同じ能力を持つ部下が男女ひとりずついた場合、男性上司は、やはり男性を引き上げる傾向がありますか。

【C氏】それは、どの会社でも絶対にそうだと思うよ。だって、男なら仕事に対して無理がきくし、セクハラも心配しなくていい。先進的な企業では「同じ能力なら、女性を引き上げるようにしています」と自慢気に言うけど、それは「方針」であって、実態とは違う。

【A氏】女性の部下を昇格させて自分の下につけると、やはり結婚や出産で退職や休職するのではと不安がる上司も多い。積極的に引き上げたくないというのが本音じゃないかな。

【B氏】女性に対する理解不足もまだまだあるね。先日、ある女性社員が「生理痛が2日ぐらい続くので、今月は2日の特別休暇をください」と上司に頼んだところ、「2日も続くわけがないだろう。うちのカミさんなんか、1日も休まないけど平気だぞ」と言ったそうだ。この上司は、部下に対して「権利だけを主張して仕事に不真面目だ」という印象を抱いて、評価も厳しくしていた。

――それは理不尽な話ですね。ところで、産休・育休や短時間勤務が評価に影響したり、給与に影響を与えることはありますか。

【B氏】ないと言いたいところだが、微妙だね。うちでは産休・育休明けに定時退社する女性も多いが、それを理由に、等級や給与を下げるのは法律的に問題なのでやらない。しかし、「君はマネジャーだけど、残業しないから就業時間内でしか部下を管理できないよね。それってどうなのかな」とやんわり説得する上司はいる。そして本人同意のうえで、部下なしの専門課長に据えて、給与等級を1ランク下げたりしている。表向きは存在しない「裏の運用」があるんだ。

表向きには存在しない「裏の運用」がある

【C氏】うちでは以前、休職期間中の人には、最低評価をつけることになっていた。実際に仕事をしていないし、何も貢献していないからという理由で。しかし、最低評価だと減給になるので、数年前から休職中の人には平均のB評価をつけるように制度を変えた。

【B氏】うちでは休職期間中の評価はしないので、育休で1年休んでも、育休前に高い評価を得て、育休後の1年で同じ評価を出せば昇格候補者になれる。ただし、2期か3期連続で高い評価を得ないと昇格候補者にはなれないけどね。

【A氏】弊社では、1年もブランクが空けば、男女を問わず振り出しに戻す。そうしないと、独身で頑張っている人や、休職社員の分も肩代わりして働いている人に説明がつかない。彼らの評価が思わしくなかった場合、「働いていない人のほうが、なぜ私より評価が高いの?」、「休んでいるのに、あの人はなぜ昇格のチャンスがもらえるの?」という不満が必ず出るからだ。