末端は何も考えなくなる肥大化ありきの官僚機構

JALの経営にもパーキンソンの法則は当てはまる。会社が存在しているだけで余計な仕事が生まれるのだ。飛行機を飛ばして顧客をA点からB点まで時間通りに運ぶ、という業務以外の仕事をしている人間が組織の大半を占めるようになる。そこでコストダウンすれば、今度はパイロットも客室アテンダントも疲労困憊し事故の危険性が高まる。機械の修理や整備部門のコストを削れば、こちらも破綻しかねない。

一方、アメリカのサウスウエスト航空、エアアジア航空(マレーシア)、ジェットスター航空(オーストラリア)、ライアンエアー航空(アイルランド)などのLCCでは1人の社員が3役も5役もこなす。カウンターでチケットを切っていた人が客室乗務員になったり、パイロットが荷物の収納係をしていたり。だからJALの半値で飛んでも儲かる。

安全性も分業体制で確認する大手と違い、パイロット一人一人が全体をきちんと確認したうえでフライトするので事故率も低い。つまり、JALがいくらコストダウンしても、LCCに対抗できるはずがないのだ。

そのJALを上回る大企業病の権化が、ニッポンの「官僚機構」である。中央集権の官僚機構には2つの問題点がある。

一つは、肥大化する組織の末端にまで栄養を行き渡らせなければならないので、中央から配る金が毎年増えていくこと。もう一つは、中央集権の一番の問題として、末端が何も考えなくなること。ヘタに考えると中央に反旗を翻したように受けとめられるので、創意工夫がまったくなくなる。結果、地方自治体などの末端の役人は、パブロフの犬のようになってしまう。これが日本の官僚機構がつくり出した凄まじい無駄であり、機能不全なのだ。

民主党の事業仕分けは、JALの再建のようなものだ。中央集権が生み出した膨大な無駄を一つ一つ個別の案件として取り上げては、現場から一番遠い素人が良いか悪いか白黒をつけていく。その手法自体が間違っている。栄養が回らなくなれば今まで動いていたものが動かなくなる。結局「このままでは死んでしまうから何とかしてください」とひたすら陳情するだけで、実態は何も変わらない。だから95兆円の概算要求に対して、1兆3000億円程度しか削れないのである。