単に“経験がある”だけでは意味がない、そんな時代

ビジネス社会は経験がモノをいうと書きましたが、事はそんなにシンプルではありません。周囲を見渡してみれば分かるはずですが、10年前と同じ方法で仕事をしているという人は、それほど多くないでしょう。

かつてとはまったく異なるやり方で仕事を進めている以上、単に経験があるというだけでは、それこそ“使えない人”になってしまいます。世の中の進化とともに、単純な経験は完全に陳腐化しているのです。

もちろん、経験から得られるスキルをきちんと理解し、進化するビジネス社会に適応できればいいのですが、それはなかなか難しいことです。

例えば対人関係スキルは、「面会してどう話すかが大事」で「電話で用件を伝えるなんてありえない」という時代がありました。その後「メールで済ませるなど言語道断だと叱り飛ばしてやった」という武勇伝が語られる状況を経て、今では「連絡はチャットで必要なことだけサクッと伝える」という流れになっています。時代とともに求められるスキルはこのように変化してきました。

昔と違い、ビジネス社会が圧倒的なスピードで変化しているという意識をもっていない人は、かつての経験とそこから得られた表層的なスキルを振りかざします。そして、「イマドキの若いやつは、仕事はできるのかもしれないが、大事なことが分かっていない」と愚痴る。その結果、ベテランこそが本当に大事なことが理解できていない、という状況が露呈されるのです。