新鮮に受けとめられた日本人的な勤勉さ

ペットフードのマーケティングを担当する栗田奈央子さんもオーストラリアで同じような経験をした。かねてから海外に興味があると上司に伝えていたことで2005年から2年弱のオーストラリア赴任が実現したのだ。結婚直後のことだった。

「外国人が定時で退社するのはイメージ通りなのですが、そうするために彼らは仕事に優先順位をつけています。ということは彼らの優先項目から外されたら、私の要望はいつまでたってもやってもらえません。積極的に働きかけることが大事だと学びましたね」

ネスレピュリナペットケア マーケティング部 栗田奈央子さん。上司のネイト・ヒルさんと一緒に。「限られた時間の中で会社への貢献度をもっと上げたい」

逆に栗田さんの日本人的な勤勉さは現地で新鮮に受けとめられた。英語力もなく、慣れないうちは土日に自宅で仕事をこなしたという。帰国時に上司が「最初は与えられた役割に対して、あなたはこれくらいだったけれど、いまはここまで来たわね」と手ぶりをまじえて評価をしてくれたことが、うれしいプレゼントになった。

2013年、栗田さんは女の子を出産。1年8カ月の育児休暇を経て2015年4月に職場復帰した。時短制度を利用して子育てと仕事の両立に励む毎日だ。もしかしたらオーストラリア時代よりハードかも、と思う。

「オーストラリア時代の上司は女性で、1歳にも満たない2人目の赤ちゃんを育てている最中でした。時間が限られているので、部下に対していかに的確に指示を出せるかが彼女には重要でした。まるでお母さんのようにサポートしつつ、かつ要求レベルも高かったおかげでかなり鍛えられました」

撮影=佐伯慎亮、冨田寿一郎