告白の先にあったもの

翌日、私は、二人に向けてメールを送った。「ミドリさんとヒロトさんは、まだお互いを愛しています。今回、破局に至った原因は、ミドリさんが秘密を一人で抱えていたからだと分かりました。お二人とも会いたいと思っているならば、私がセッティングをいたします」

ヒロトさんから即座に返信が来た。「ぜひ会いたいです。僕は彼女と結婚するためならなんだってします」驚くほどの前のめりさで、あっという間に再会が決まった。

ミドリさんは、勇気を出してヒロトさんに過去の話をした。しばらく重い沈黙が続いた後、彼は「ごめんなさい」と頭を下げた。

「ヒロトさん、謝らないで。私が悪いんだから。今日は来てくれてありがとう」「いや、違うんだ、そうじゃないんだよ」「えっ?」「僕も同じことをしているんだ。隠していてごめん!」

ヒロトさんには、高校生の時に付き合っていた彼女を妊娠させた過去があった。「僕は、自分がやったことをミドリさんのように深く受け止めていなかった。女性がこんなに傷つくことを知らなかった僕こそ、許してもらえないだろうか」

こうしてお互いの重大な過去について話をし、ミドリさんとヒロトさんはこのことを二人だけの秘密にして、共に生きていくことを選んだ。

相手にどこまで自分の過去の出来事を話すのか。これは本当に悩ましい問題だ。全てを洗いざらい話せばいいということでもない。ただ少なくとも、「これを話さなければ、相手に嘘をついている気がして耐えられない」というような問題は、告白をする必要がある。パートナーに対して自分らしくいきいきと振る舞えなくなるからだ。

それに重荷には、分かち合うことで二人の距離をより近づける力がある。結婚相談所という仕事をしていると、お客様のさまざまな来歴を知ることが多々ある。過去とは、今、目の前にいる人をその人たらしめるもの。相手の過去を知ったとき、過ちだけを切り取って、許せずに切り捨てるという選択肢だけではないことを、心のどこかにとどめておいてほしい。そう願わずにはいられない。

大西明美
婚活アドバイザー。結婚相談所を経営。1977年大阪府生まれ。東京都文京区在住。過去20年で延べ4万3000件の恋愛を研究してきた婚活指導の第一人者。小中学校ではイジメを受け友達がいなかったため、周囲の人間関係を観察することを目的にして登校を続ける。特に恋愛に注目してコミュニケーションを学ぶ。高校生のとき、初めてできた友人に恋愛相談を持ちかけられ、日頃鍛えた人間観察眼を生かしたアドバイスを行い、無事に解決。それをきっかけに恋愛相談が立て続けに舞い込むようになる。婚活指導を通して、5年間で200組以上のカップルを成婚へと導いている。
著書に『となりの婚活女子は、今日も迷走中』(かんき出版)がある。