「どうしてヒロトさんと別れちゃったんですか?」私は、単刀直入に聞いた。「実は……まだヒロトさんのことが好きなんです」「はぁ!?」思わず大きな声を出してしまった。

「好きって……じゃあなんで振ったんですか? 私には全く意味が分からないのですが」「彼は、本当の私のことを知ったら、結婚したいなんていうはずがないからです」「それはどういうことですか?」「私、大西さんにも隠していることがあるんです」

一人で秘密を抱え続けて……

「大学生の時に同棲をしていた彼がいました。そして2年生の時に、妊娠してしまったんです」結婚相談所の入会申込書には、子供のことなんて書いていない。

「そのことを彼に言ったら……『お互いに将来があるから、今回は諦めよう。社会人になったら、また一緒に子供を育てような』という言葉が返ってきました。それで私……」「もうそれ以上、言わなくていいから!」私は、肩を震わせる彼女の手を強く握った。

「人によってはミドリさんのように悩まず、一生秘密にして生きる女性もたくさんいます。でも、ミドリさんはこれまでプロポーズを3回も断っています。これって、パートナーには自分の過去を明らかにしたいと思っているからではありませんか?」「大西さんの言うとおりです。でも勇気が出ないんです。このままじゃ、私は一生結婚できない気がします」

たしかに、そう。このままでは、同じことを繰り返すだけだ。私は一つの提案をした。彼女は受け入れてくれた。