社内の会議でも、私は参加メンバーをポストやポジションに関係なく、「誰が顧客に直接接し、生の声を知り、必要で正確な情報を持っているか」を基準に選ぶ。情報は人を介せば介すほど、人の解釈や都合によりバイアスがかかりやすい。組織内ではよい情報ばかりが上がり、悪い情報は滞ることも多い。数字になって初めて事態の深刻さを知ったのでは対応が後手に回る。

雑音を排除し、真に価値ある情報をつかんだら、第二の基本として、その時点で「これが最善」と思われる判断を行うことだ。それが正しかったかどうかは結果にすぐ表れる。間違っていたら修正し、新たな判断を行えばいい。中長期的にはよい方向へ収斂していく。

例えば、前回行った判断が100点満点で60点だったら、問題点を検証し、次は120点の判断を目指す。これを繰り返し、ならして100点に近づけていくという判断の技術が必要なのだ。

その一方で、わが社は今期の業績予想をあえて見送った。市場環境は急激な変化が続き、見通しが立たない。できない予想はすべきではないと考えた。もちろん、多くの企業は景気の先行きをある程度予測して業績予想を行っている。そのすべてがそうだとはいわないが、なかには景気の回復を当てにしているかのように見える企業もある。それは裏返せば、「業績が悪いのは不景気のせいである」と言い訳にするのと同じ発想だ。

わが社の場合、業績が落ちた理由を不景気と結びつけて会議で長々と説明し始めようものなら、その場で私にきつく叱責される。今求められているのは、言い訳探しではない。不景気は1~2年は続くと覚悟したうえで、それをいかに克服し、いかに結果を出していくかだ。そのためには、日々変わる市場環境の中で真の情報をつかみ、その都度、最も現実的な最善の判断を積み上げていかなければならない。