『活』という字に込めた思い

「リーダーに求められるのは、それぞれの部下のステージに合わせて仕事を評価し、アドバイスの言葉を選んで人を育てる力でしょう。でも、最初はなかなか思うようにいかなくて……」

例えば、味の素には課長職になる直前の役職に「総括」という立場がある。量販店での交渉を一人でまとめ上げることは、いずれ課長となる彼らにとって必須の経験だ。上役が口を出せばすぐにまとまりそうな商談でも、あえて見守り、彼らが自分で答えを出すよう促していくのもリーダーの役割だ。

【上】味の素の営業職の構成/営業職400人中、女性グループ長は岡村さんのみ。【下】仕事の必需品/ノートPC、手帳、スマホ2台。アイデアを書き留める付せんも常に携帯している。

「ただ、そうとわかっていても、つい助け舟を出してしまったり、若手社員に対しても中堅社員と同じことを求めてしまったり。後ではっと気づいて後悔することも多くて。私自身、初めてリーダーという立場になって、どんな上司になっていくべきかを試行錯誤している最中なんです。『活』という字には、その思いを込めたんです」

味の素の営業部には、岡村さんが所属する「家庭用」のほかに、飲食店に大きなサイズの調味料などを売る「外食用」、加工食品メーカーを得意先とする「加工用」のグループがある。

1992年の入社以来、岡村さんは主に「外食用」の部署で働いてきた。そして、初めてリーダーとして「家庭用」の営業グループに配属された現在、彼女が「大きな経験だった」と振り返るのは、「大阪支店外食第2課(当時)」に異動となった1998年、惣菜用の冷凍食品や揚げ油を採用してもらうために、スーパーに日参した仕事だ。