仕事、家庭生活、お金、親子関係……、さまざまなお悩みに、100冊以上の著作を誇る作家の本田健さんと、PRESIDENT WOMAN Onlineの連載「WOMAN千夜一夜物語」でおなじみのコラムニスト河崎環さんが回答する人生相談、今回は「子供の育て方」に関するご相談です。

【今回のご相談】
40歳を目前に子供を授かりましたが、育て方に悩んでいます。思いやりのある子に育ってほしいなど願いにキリはありませんが、正直なところは「自分の食いぶちを稼げる大人になってほしい」と思ってしまいます。本田さんや河崎さんのように、自分の得意なこと、好きなことを仕事にして稼げる人に育てるためには、どうしたらいいですか。
「好きなことを仕事にするのはとても難しい」と聞きます。好きなことにもいろいろありますが……(イラスト=伊野孝行)

好きなことを「得意」から「食える」レベルにするためには……

【河崎環さんの回答】

私は流れ流れてこういう羽目、こういう細々とした仕事になっているというだけの、非常にグダグダな人生を送っていますので、優秀なご相談者の大事なお子さんの将来のためには参考にもお手本にもなりません。日頃、うまいものを食べたりイケメンを見かけたりして心が動くと頭の中に文章が流れ出す奇妙な体質のせいで、こんなことになったのではないかと思います。しょせんただの変人です。

ただグダグダゆえに、いわゆる「だめんず」の典型とされる、夢ばかり追いかけて食えないバンドマンや劇団員や小説家や画家や漫画家、お笑い芸人などの気持ちはとってもよく分かるのです。彼ら、心が動くと頭の中に音楽が鳴り始めたり、文章が流れ始めたり、絵や映像が見えたり、登場人物が動き始めたりするんだろうなぁ。得意とか好きとかを超越して、そういう生き方しかできないんですよね。

好きなことを仕事にして食えるレベルにするのは本当に難しい。「得意」から「食える」への国境には、ドリーマーたちの死屍累々です。「好きなことで稼げる人に育てるにはどうしたら」って、私が聞きたい。実際に成功している人を見ると、才能、タイミング、コミュ力……。正しい答えなんてないんですよ。でもたぶん、プロとして継続していくのに大事なのはつまるところ「確かな技術」なんじゃないか、そう思います。

ですからアラフォーで授かったという大事な大事なお子さんが、万が一にもそういうクリエイティブ方面へ本気を見せ始めたら腹をくくり、「どヘタだわ、食えないわなんてのが一番カッコ悪いから、とにかく技術だけは磨きなさい。どんどん描いて、書いて、作って、演りなさい」と、応援(?)してあげてほしいのです。素振りみたいに、とにかく毎日手を動かすことで開ける未来もあるかもしれません。

先輩の有名ライターに、その極致たる人がいます。毎朝決まった時間にいつもの喫茶店のいつもの席に座り、ノートパソコンを開いて「ヨーイドン」、ぴったり30分で大人気コラムを一本仕上げ、そのまま編集者に送信するのです。毎日違うネタで、です。何その才能。ヘコむからホントやめてほしい。箸にも棒にもかからぬ私は変人で済んでいますが、その人はド変態だと確信しています。

女性回答者プロフィール:河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。