女性が働きやすい職場は、男性も働きやすい職場

コミュニケーションのうまさや、改善点にすぐ着手する大西氏の実行力は、サブメンターでも活かされている。

「個人面談のとき、『自分が課長や所長になることが想像できません』と言うので、じゃあ、私の店に来てみたらと提案しました」

南福岡営業所の職場環境を見てもらい、女性がはつらつと働いている姿を目にすれば、自分の営業所もそんな雰囲気にしたいと思うに違いないと、大西氏は考える。

だが、何も女性だけを優遇しているわけではない。最近、子どもが生まれた男性ドライバー2人には、連続2週間の休みを取ってはどうかと提案した。

「嫁に相談します」と言いながら、その顔はほころんでいた。男性ドライバーが抜けた穴は、男性係長たちに埋めてもらった。

2015年はその係長3人が、お盆、シルバーウイーク、冬休みのどこかで連続1週間休めるようシフトを組んだ。

「男性社員だって、家族から『いい会社だね』と言われないと、誇りを持って働けないと思うんですよね」

大西氏の言葉に、荒木社長も大きくうなずく。

「女性が働きやすい職場というのは、イコール、男性も働きやすい職場ということです。男性だけだと、『言わなくても通じる』といった空気になりがちですが、女性は気になることをあえて言葉にして、現場の声を上手に引き出す。その結果、職場の雰囲気がソフトになり、男性側にも女性を守ろうという優しさが生まれます」

数年前から、思い切った女性活用にかじを切った佐川急便。男社会のカルチャーを脱し、男女がともに助け合い、知恵を出し合う新しい会社へ変貌を遂げようとしている。

撮影=冨田寿一郎