家庭を持つ女性が柔軟に働ける仕組みに

ほんの数年前、佐川急便の女性比率は15%程度だった。これは管理部門も入れての数字だから、営業所単位でみれば、女性比率はさらに低くなる。

ほとんど男性しかいない職場で、女性が働きやすい職場づくりはなかなか進まなかった。トイレも男女兼用といった具合だ。女性ワクワク推進課の仕事は、トイレを男女別々にするところから始まった。

人事部 女性ワクワク推進課 課長 三宮加代氏「風土を変えるために、指導的な立場の女性を現場に多く配置したい」

それと同時に、女性ドライバーが多い軽四車両で配達するコースや、トラックを使わず台車で集配する部門で、時間を区切った交代制を敷き、短時間でも女性が働ける仕組みを採用した。

今までは1人で働いていた時間帯を2つ3つに分けて、2、3人で担当する枠をつくるのだ。これなら家庭を持つ女性でも、自分が働ける時間帯に応募できる。

ただし運用が多様化する分、管理職の仕事は大変になる。従来は1人に指示しておけばよかったのが、2人、3人に同じ指示を出さなければならない。シフトの組み替え、交代時の引き継ぎといった見直し作業も伴ってくる。

「営業所長から面と向かって反対されたことはありませんが、やはり心理的には抵抗感があったと思います。でも、それがきっかけでマネジメント能力が向上した面もあると思います」

実際、柔軟な働き方を進めた結果、営業所の生産性が上がったケースもある。三宮氏は、そんな事例を社内報などでどんどん発信していこうと考えている。そうすれば、多くの営業所長が「うちでも交代制をやってみよう」と前向きな気持ちになるはずだ。

ハードや仕組みを整えて女性が働きやすい環境を整えるとともに、男性社会にありがちな風土、文化の改善も進んでいる。たとえば、ぶっきらぼうな物言いを改めたり、呼称を「さん付け」や「君付け」に移行するといったことだ。それも功を奏し、ここ3年で女性の定着率は10%上がった。

今期からは女性の雇用を増やすだけでなく、女性のリーダー職を多く輩出する取り組みを始めている。その狙いを、三宮氏はこう語る。

「スピード感を持って風土を変えるためには、土台となる女性の数を増やすことが欠かせません。まだまだ男性色の強い会社ですが、指導的な立場の女性を現場に多く配置すると影響力が大きくなると思います」

撮影=冨田寿一郎