性別問わず必要な、固定観念を取り除く教育

【大隅】私自身の話をすると、リクルートでの新人時代は男性との体力差を感じていました。体力的に、すごくきつかった。また初めて管理職になる時は壁を感じました。一般論でいうと管理職やリーダーって、一国一城の主のような男性的なイメージですよね。私が昇進して60人の部下を持った時、どういうマネジメントスタイルをとるかと、自分の見せ方や部下との接し方にすごく悩んだんです。それで一時期、男性っぽく振る舞うようにしたところ、髪の毛が薄くなった(笑)。本当ですよ。「これはいかん」と限界を感じました。

それでまず、課長としてのパフォーマンス技術を身に付けました。結果的にはそれが後にも役立ちました。それら技術の中で一番大事だったのは、私の場合、説明能力でした。私の考えをきちんとメンバーに伝えること、そして私のチームが取ろうとする行動を上に伝えること。それができるようになってからは、部長昇進の際も悩みませんでした。ですからローソンでも、女性だけ管理職登用研修をやるのはどうなのか、という議論もありましたが、課長になる時には研修が必要だと思います。

逆にベーシックな技術が身に付いてくると、女性のほうが有利なところもあると思うんですよ。例えば部下を育てる場合、頭が薄くなったから言うわけではありませんが、私は母性満開でいいと思っています。

女性って家父長的じゃないので、優秀な子だけかわいがるのではなく、1人1人を育てる気持ちで向き合えると自分では思っています。私自身に子育ての経験はありませんが、実際の子育て経験の有無にかかわらず、技術さえ身についてしまえば、後は女性として自然に振る舞えばいい。だからこそ最初の支えになるのが、チームを率いる技術ですね。

【中野】個人的には母性という言葉は使わないほうがいいと思います。女性であれば全員母性があるとは言えないでしょうし。そこはあくまでも「タスク型」の適材適所ということなんだろうと思います。

【入山】学術的な意味でフォローアップしましょう。梅田さんがおっしゃったLGBTの方の例。女性というだけで偏見があるというのは、これは心理学の「ゴールドバーグ・パラダイム」という有名な法則で説明できます。これは日本だけでなく世界中でそうなんです。今の社会システムって、女性というだけで色眼鏡で見られるというか、評価が下がるんです。

例えば、ある研究論文の著者の名前を隠して審査員にレビューさせると、女性経済学者の書いた論文のほうが高く評価されます。だけど著者が誰かということを明らかにすると、女性の著者が書いた論文は圧倒的に低く評価される。女性が女性を評価する時ですら同様だそうです。

これは今までの長い歴史が男性中心社会だったので、人間の社会のあり方に対する考えがそうなっているのですよ。これを乗り越えるのは結構大変なこと。だから本当は会社というより、社会全体でどんどん変わらねばならないのです。

さきほど女性にどういう研修をすべきかという話がありましたが、僕はむしろ男性にもちゃんと研修をして、女性に対しての固定観念を取り除くことを積極的にすべきだと思います。