ライブステージ別・おすすめ経済小説

【仕事の面白さを発見】
『やってられない月曜日』柴田よしき(新潮社)
単調な出来事の繰り返しのなかで、常にモチベーションをもって仕事に接し続けることは、結構むずかしい。主人公の高遠寧々は28歳。コネで入社した大手出版社経理部に勤務。唯一の楽しみは、趣味の模型作り。それが意外な効果をもたらすことに。

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『今夜も残業エキストラ』吉野万理子(PHP研究所)
劇的なことは過去に一度もない。仕事も脚光を浴びることがない、ただのアシスタントにすぎない。ごく平凡な毎日。そんなエキストラのような存在の主人公、26歳の紺野真穂が、日常的な仕事そのもののなかに「面白さ」を発見していく。

【出世】
『スコールの夜』芦崎 笙(日本経済新聞出版社)
男女雇用機会均等法に伴う第1期生として巨大銀行に入行した吉沢環。メガバンクの女性幹部候補が経験する非情な汚れ仕事、派閥抗争、嫉妬と偏見を描写。女性の管理職について考えさせられる好著。42歳の女性があらためて自分自身の仕事と真正面から向き合う。

【降格】
『辞めない理由』碧野 圭(PARCO出版)
主人公の七瀬和美(37歳)は、小学校1年生の娘を持つワーキングマザー。大手出版社の女性誌の副編集長をしていたが、突然降格される。しかし、それによって、初めて自分の仕事に対する取り組み方の本質とチームワークの大切さに気づくことになる。

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【リーダーシップ】
『編集ガール!』五十嵐貴久(祥伝社)
出版社の経理部勤務5年目になる27歳の高沢久美子は、無謀にも女性ファッション誌の編集長に就任。ど素人の彼女は、従来の男性目線から女性目線への転換、勇気ある決断、情報の共有化を行い、リーダーシップを発揮して一人前の編集長になっていく。

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【起業】
『風のマジム』原田マハ(講談社)
28歳の派遣社員・伊波まじむは、入社して3年が過ぎたものの、自分のすべきことが見つからない。だが社内ベンチャー募集に応募したことで、南大東島を舞台に日本発の純沖縄産ラム酒の製造会社を起業する。モデルはラム酒製造会社グレイスラムの設立者・金城祐子。

【経営者】
『ローカル線で行こう!』真保裕一(講談社)
第三セクターが運営する、宮城県の架空のローカル線もりはら鉄道は、まさに破産寸前。その新社長に、東北新幹線のカリスマアテンダントであった31歳の篠宮亜佐美が就任。「お金がないなら、知恵を出すべき」という亜佐美のもと、活性化策が打ち出される。

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【仕事と子育ての両立】
『書店ガール』碧野 圭(PHP研究所、~4巻)
吉祥寺の書店に勤めるアラフォーの独身店長・西岡理子とアラサーの部下・小幡亜紀が織りなす物語。仕事と妊娠・子育てとの両立、それに対する上司や職場の姿勢、書店の経営・運営や棚の作り方など、書店の魅力が満載。

【親の介護】
『七十歳死亡法案、可決』垣谷美雨(幻冬舎)
70歳で死ぬという法案の波紋は? 専業主婦の55歳の宝田東洋子は、わがまま放題の義母の介護に追われている。能天気な夫、引きこもりの息子、無関心な娘など、みんな勝手ばかり。介護のしわ寄せはすべて彼女に。耐え切れなくなり家出すると、予期せぬことが……。

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堺 憲一(さかい・けんいち)
東京経済大学学長。経済小説研究家。1948年大阪府生まれ。これまでに読破した経済小説は1200冊を超え、新聞、週刊誌、ビジネス誌などに書評・評論を多数執筆。文庫版の作品解説も行っている。著書に『日本経済のドラマ 経済小説で読み解く1945-2000』(東洋経済新報社)、『この経済小説がおもしろい!』(ダイヤモンド社)など。

構成=中津川詔子 イラスト=MACCHIRO