提言:フルスペックの認可保育所を増やすことが大切です

●保育園を考える親の会代表 普光院亜紀さんから

一にも二にも待機児童対策を急いでもらいたいのですが、預けられればどんなところでもいいというわけではありません。

できる限り「ハコモノ」で保育園を増やしてほしい。保育園は単なる親のための託児サービスでなく、子どもが健やかな心と体を育むための場所です。

今、子どもの運動能力や五感、人間関係力の育ちが弱くなっているのは、体を動かしたり、自然とふれあったり、子ども同士で遊ぶという体験が不足しているからにほかなりません。目先の待機児童減らしのために、認可保育所新設がビルの中ばかりになっている自治体もありますが、このままでは、数十年後、あのときの保育施策が間違っていたということにもなりかねません。

当面、急場をしのぐ施策も必要ですが、同時に、園庭のあるフルスペックの認可保育所を増やす努力が必要です。都市部も少子化になったときには、用途転換しやすいしくみにすれば、つくりやすいはずです。

この10年余、設置コストが安い地方単独事業(自治体の助成制度)の認可外ばかりが増えた結果、今、親たちは認可保育所を求めて激しい「保活」を行っているのです。

保育園は、生活の場としての強みを活かした就学前教育の場であり、子どもを貧困から救済する児童福祉施策でもあります。その機能を十分に発揮させ、社会のインフラとして有効活用するためには、施設と同時に人材育成にも投資する必要があります。保育を学んだ人が、一生の仕事として保育士になることを選び、現場で経験を積んでこそ、教育から福祉にわたる幅広く質の高い仕事ができるようになるのです。事業者の心根も重要です。人件費率が低い事業者が増えていますが、保育園を虐待のあった高齢者施設のようにしては、国の将来はありません。

撮影=市来朋久