現代アートにはいろいろな形がありますが、今回は写真を含んだ映像ということで、写真、ビデオ、コンピュータグラフィックスなどについてお話してみたいと思います。まず写真部門ですが、現在、行われている写真の展覧会には、大きく分けて雑誌「ライフ」やマグナムフォト出身者が多い報道写真系、世界中の崇高な場所を切り取る風景系、日常を切り取るストリート系、スタジオ撮影を中心として作りこんでいくポートレート系などがあります。

報道写真系では世界各地のいろいろな出来事を取材する報道カメラマンが数多く存在し、彼らの最高の栄誉としてピューリッツアー賞があります。その受賞者の中にはベトナム戦争を取材し、悲惨な状況の中でのわずかな希望を写真に捉えたロバート・キャパや日本人写真家の沢田恭一や酒井淑夫がいます。また「決定的瞬間」という写真哲学で知られるアンリ・カルティエ・ブレッソンなども報道系に近い写真家と言えるでしょう。

多くのファンを持つ風景写真の頂点はおそらくアンセル・アダムスです。彼が撮影したヨセミテ公園のシリーズは長年、写真作品の最高額を記録していました。

ポートレート系ではたくさんのミュージシャンや俳優を撮影してきたアニー・リーボビッツやセクシーな写真で裁判事件にも発展したロバート・メイプルソープなどがいて、今でも高い人気を誇り、世界のどこかで必ず展覧会が行われています。また「写真の父」と呼ばれるエドワード・スタイケンはNYのMoMAに写真部門を設立したことで知られていますが、彼が企画し200名以上の写真家が参加して世界巡回した「ファミリー・オブ・マン」の展覧会は、大きな成功を納め、その後の写真界に大きな影響を残しています。

杉本博司「劇場」シリーズの1点。(アートフェア会場にて)
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杉本博司「劇場」シリーズの1点。(アートフェア会場にて)

現代アートの写真部門は、ドイツ出身のヴォルフガング・ティルマンスが2000年に最高の現代アーティストに贈られる、イギリスのターナー賞を受賞したように、近年、人気が上昇しています。日本人で世界的に評価が高いのは杉本博司です。彼はアメリカにある古めかしくも雰囲気のある映画館へ行き、映画一本分をそのまま露光して写した「劇場」シリーズや、博物館の剥製をリアルに撮影し、あたかも目の前で起こった出来事のように写真化した「ジオラマ」シリーズで有名です。また、蝋人形館にいる、古今東西の有名人を生々しく写真として再現した「蝋人形」シリーズなどは、恐ろしいほどのリアルで肖像写真のような作品となっています。

1年ほど前のオークションでは、それまでの最高額であったアンセル・アダムスの写真の価格をはるかに超え、数千万円の価格が付きました。杉本博司の他にも、日本では雑誌「S&Mスナイパー」等の風俗写真家として認知され、エロティックな写真シリーズで欧米では“エロスとタナトス”の巨匠となっている荒木経惟、70年代後半から「アレ、ブレ、ズレ」という大胆でザラいた写真ながら抒情的な魅力に富みんだ写真でファンを獲得している森山大道らがいます。

女性写真家では現在、新宿の東京オペラシティーアートギャラリーで個展を開催中で鮮やかな原色の花のシリーズで知られる蜷川実花、「海に潜る人」や種子島宇宙センターの打ち上げ写真のシリーズで大人気の野口里佳、11月30日まで原美術館で個展を開催している米田知子、来年のヴェネチアビエンナーレ日本館代表のやなぎみわ、横須賀の街のシリーズ、亡くなった母親の下着のシリーズが海外で高く評価された石内都らが活躍しています。

難しいと言われる現代アートの中にあって写真はわかりやすく、飾るのも楽で、現代アート初心者コレクターにはうってつけです。そのうえ、絵画と比較して価格も手頃です。同じ作品でだいたい数点から20点くらいまでエディションがあり、かなり有名な作品でもギャラリーへ依頼して探してもらえば手に入れることが出来ます。