「感性に訴えかける家電」が求められている

日本市場ではこれまで、オーブンレンジやエアコン、ドラム式洗濯機に代表されるような多機能な家電こそが、豊かさの象徴のように思われてきた。だが、1世帯あたりの人数が減少し、ライフスタイルが多様になった今、オーバースペックでサイズも大きくなってしまった家電製品には魅力を感じにくいのだ。価格を上げるためや、他のメーカーに負けまいとするためだけの多機能性では、使い勝手も悪く、結局は使いこなせないという至極当たり前のことに、消費者が気づいてしまったということでもあるだろう。

イラスト=Yooco Tanimoto

また、スペックで判断する男性的な視点よりも、心地よさや美味しさ、使い心地のよさなどの感性に訴えかける家電を欲しいと願う人が増えてきていることもその背景にある。調理家電やコーヒーメーカー、ジューサーなどキッチンまわりの家電の人気が高いのも同じ理由だ。

倹約するところは抑えて無駄を省き、その一方で暮らしの中でこだわりたい部分にはお金を使うという、“少し上の豊かさ”や“上質な暮らし”への希求も一点豪華家電の思想とぴたりと一致する。

その家電を暮らしに1つ取り入れるだけで、食生活が豊かになったり、くつろぎの時間が充実したりする。そんな、暮らしを格上げしてくれる家電がさらに増えるに違いない。

神原サリー
株式会社神原サリー事務所・代表取締役社長。顧客視点アドバイザー&家電コンシェルジュとして執筆やコンサルティング、講演等を行っている。

イラスト=Yooco Tanimoto