2016年は「オリジナル作品」の競争が激化する

オリジナル作品という意味では、なによりNetflixを最初に考えるべきだ。

同社は欧米で、ハリウッド映画並みに投資したドラマで成功を収めた。2015年中に作られたものの中では、歴史大作「マルコ・ポーロ」や、映画『マトリックス』の監督であるウォシャウスキー姉弟が制作した「Sence8」の評価が高い。2015年秋にAmazonも、配信を開始した「高い城の男」がアメリカで話題となっている。

イラスト=Yooco Tanimoto

一方で日本の場合、過去10年ほどで嗜好(しこう)の保守化が進み、海外からの作品よりも、国内向けに作られた作品を好む傾向にある。そのため、国内に基盤を持っているdTVやHuluはもちろん、NetflixやAmazonも、2016年は日本向け作品の制作を加速する。

Netflixは目玉として、吉本興業とタッグを組み、あのベストセラー『火花』の映像化を行う。Amazonは現在制作中の20タイトルのうち、10本が日本を念頭に置いたコンテンツだとしている。dTVは、映画やドラマのスピンオフ作品を中心に、オリジナル作品を展開している。2015年夏に公開された実写映画『進撃の巨人』のスピンオフ作品は、映画で描かれなかった部分を描く、補完的な作品になっている。

Huluは、女性殺人鬼を描いたベストセラー小説『殺人鬼フジコの衝動』を完全ドラマ化した「フジコ」が話題だ。地上波では表現にさまざまな制約があり、表現の自由度が低いため、今回初めてドラマ化が実現した。Netflixでも、自由度の高さがクリエーターに評価され、オリジナルドラマの増加につながっている。

2016年はこうした要素での競争が激化する。「ドラマといえばテレビ局」という常識が変わり、日本でも「ネット発ドラマの大ヒット」が出るようになるのは、遠い話ではないかもしれない。

西田宗千佳
フリージャーナリスト。得意ジャンルは「電気かデータが流れるもの全般」。著書に『ソニーとアップル』(朝日新聞出版)などがある。
 

イラスト=Yooco Tanimoto