安易な値引きをしないために必要な準備

しかし、値引きは商談をまとめる上での有効な手段の一つです。「してもいい値引き、してはならない値引き」を区別するためには、どうしたらいいのでしょうか。

まず、安易な値引きがいけない理由は、値引きによって会社の利益を食いつぶしてしまうことがあるからでした。ということは、利益がマイナスにならない、つまり最低でも利益がゼロにとどまる売上高を把握しておく必要があります。「もうこれ以上、下げてはならない」という売上高のデッドラインです。

「利益がゼロになる売上高」ときいてピンときた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

前回の記事「あなたの部署は黒字?赤字?損益分岐点を簡単に調べる法」を思い出してみてください。総コストを上回る売上額であれば利益が出る、ということでしたよね。このコストに応じた「利益を出すために最低限必要な売上高」を損益分岐点売上高と呼びます。だからこそ、コストがどれくらいなのか、どうしたら減らせるのか、ということを常に把握しておくことが必要なわけです。

この「これ以上、下げてはいけない」という売上高のデッドラインを把握し、それよりも上の範囲で、「自社の利益が出て、取引先や顧客が喜ぶ金額」の最低ラインを決めて交渉に臨むことになります。

値上げのできる企業の共通点

では、損益分岐点売上高以上に売上を上げて、利益を出すにはどうしたらいいのでしょうか。コストを下げずに売上を増やすわけですから、販売量を増やすか、価格を上げるかのどちらかになります。しかし、一般的には企業規模が小さくなるほど、販売量を急に増やすことは難しいものです。そうすると、残された選択肢は「価格を上げる」ということになります。

私は中小企業診断士として、企業のコンサルティングを行っています。その経験から言うと、安易な値引きをせずに、値上げに踏み切れる企業には、共通点があります。その一つは、最終的に商品を購入する消費者、取引先、自社の社員といった「周りの人たち」がどうすれば喜ぶか、という点をとことん真剣に考えていることです。言い換えれば、どれだけ「想像力を働かせているか」ということになります。