そんな人ともやっていける距離感を測って

【河崎環さんの回答】

あっ、近い近い。あなたと上司の距離が近すぎます。「上司の能力が低くて人格的にも問題がある」。手厳しい評価ですが、上司をそこまでザッパリと斬るからには、おそらく生理的なレベルでも相当お嫌いなのではないか、そんな気がします。だから距離を置きましょう。

人間関係には、鏡の法則があります。そしてまさにあなたのおっしゃる通り「人間関係とは、互いが互いに敬意を持つところから始まる」ものですよね。

日々顔を合わせ、同じ利益を追求する職場のチームの一員であるはずの上司に対してかなり厳しい評価をお持ちのようですが、あなたの態度や相手への評価は、ほぼそのまま、相手の態度やあなたへの評価としてはね返ってきます。相手に尊重されたいのなら、どんなに公正に客観的に見て相手の「能力が低く、人格に問題がある」としても、まずあなたの側が相手を尊重することから始めなければ、人間関係はずっと平行線です。

「上司が尊敬できない人間だ」との断定一択から話が始まる時点で、あなたの側のシャッターが閉まっているわけで、しかしながら二者の距離は近いという息苦しさ。そのままでは解決は遠そうです。自分が相手を見下しているのに、「なぜ相手は私を尊重できないのか」と憤慨しても始まりません。

100%何もかもダメという人はいません。何か一点だけでも、いいところを見つけて評価し、程よい(近づきすぎてうっかり神経を逆なでされない)距離をあなたなりに見つけて付き合っていくことで、あなた自身の肩の力が抜け、相手への敬意が生まれ、やがて敬意が返ってくるのではないでしょうか。キーワードは「そんなポンコツな相手にも敬意を払える、心の距離探し」です。

女性回答者プロフィール:河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。

文=本田健、河崎環 イラスト=伊野孝行