全員が声を出せるミーティングが理想

結婚と出産、そして昇進。こうした環境の変化の過程で、原さんの関心は、次第に「自分の実力」から「チームワーク」へ移っていったという。

「優秀な人材がそろっているチームでも、歯車がかみ合わなかったら動かない。ところが、能力にばらつきがあるチームでも、歯車さえかみ合えば動くんですね。その感覚を理解できるかどうかが、自分にとっての大きな分岐点だったように感じています」

Holiday Shot!【写真上】ベランダガーデニングが趣味で、水やりのたびに植物に話しかけている。【写真下】手軽にできる体力づくりとしてフラフープを日課にしており、1日1000回ほど回す。

ゲーム開発の現場は、昔も今も男性中心の職場。そのせいか、会議でもお互いの理屈を論破し合ったり、声の大きさを競うような雰囲気になりがちだという。だが、そのことに原さんは一抹の危機感を覚えている。

「今の時代はユーザーが多様化していますから、幅広い意見、声の小さな人の意見にしっかりと耳を傾けることも、ゲーム開発にとって重要になってきているはず。私のこれまでの経験では、歯車がかみ合っているチームはミーティングで全員が声を出し、良い話し合いができていました」

2013年、カプコンは女性をメインターゲットにするゲームを企画するため、開発部に「女性企画チーム」を立ち上げた。

2015年、そのチームのプロジェクトマネージャーに就任した原さんは、「ピラミッド型のチームではなく、多様な意見が自由に飛び交う環境を社内でつくっていきたい」と語る。

絵を描くことを仕事にしたくて前職を辞めたとき、「たとえ才能がなかったとしても、努力し続けることならできる」という思いが自身を支えていた。それは今も変わらない。

「新作をリリースするのも、組織を変えていくのも、本当にたくさんの困難を乗り越える必要があります。でも、どんな目標に対しても諦めないこと。そして、これはできないという壁を、自分でつくらないことが一番大事なのだと思っています」

■原さんの24時間に密着! (残業のある日)

6:00~7:00 起床/朝食、身支度
7:00~8:30 自宅出発/出社
8:30~12:00 仕事
12:00~13:00 昼食
13:00~18:30 仕事
18:30~19:00 夕食
19:00~21:00 仕事
21:00~22:30 退社/帰宅
22:30~24:00 入浴、片付け、他
24:00~06:00 就寝

【写真左から順に】70分かけて通勤。残業の翌日も8:30に出社する。/専用ソフトでチーム全体をスケジュール管理する。/社員食堂でランチ。日によってはお弁当や外食。/ミーティングでは参加者全員から意見を引き出す。/部下の仕事をチェック。疑問点は早めに話し合う。
原 美和
カプコン CS第一開発統括第一開発部 第三ゲーム開発室 室長。1999年、カプコンにアルバイト入社。2001年、同社の正社員となり、背景スタッフとして「鬼武者」シリーズの制作チームに配属。04年に出産。育児休暇を経て背景リーダーとなる。15年より現職に就任。

撮影=森本真哉