本当のダイバーシティが、イノベーションを生む

1997年、IBMがグループ各国の女性社員割合のランキングを発表した時に、日本IBMは残念ながら、世界で最下位になってしまいました。その後、女性社員数と管理職層の女性比率の向上に注力してきたのですが、それだけではあまり女性比率が伸びませんでした。

一方でアメリカ本社のダイバーシティ施策はどうだったかというと、「人種」「障がい者」「LGBT(性的少数派)」など、8つのダイバーシティ委員会が同時に立ち上がっていました。やがて日本でも「障がい者」「LGBT」「ワーク・ライフ(働き方の多様性)」などいろんな委員会を作るようになり、ハッと気付いたら女性比率がぐんと伸びていたのです。

入山先生が「フォルトライン(組織の断層)理論」の話をされましたが、まさにその通りでした。つまり男性ばかりのところに女性を増やそうとしても、違いばかりが目についてフォルトライン(断層線)ができてしまうけれど、そこへ同時に障がい者、外国人、LGBT、働き方の多様性などを入れていくと、女性も含めたダイバーシティ化が一気に進んだのです。

IBMでは人材の多様性に加え、働き方にも多様性を取り入れた結果、女性活用が加速した。さらにダイバーシティを推進するために、IBMが重視するのは、経営層の多様化だという。

ですから本当のダイバーシティというのは、決して女性にやさしい施策ではないと思います。女性も男性も、あうんの呼吸で通じるグループから、自分と価値観の異なる人たちと議論し、切磋琢磨していかなければなりません。でも社員をちょっと不自由な状態に追い込むと、どうやったら居心地よくなるか考えるようになり、そこにイノベーションが起きます。ここにお集まりの人事部の皆さんに、私たちの経験が参考になれば幸いです。

撮影=岡村隆広