女性初の主査、ロマンからソロバンへ

女性エンジニアのフロントランナーが竹内都美子氏だ。2015年2月1日、39歳で女性初の商品本部主査についた。開発を統括する役職で、他社ではチーフエンジニアとも呼ばれる。競合も含めて女性が担うのは珍しく、この若さで就任したのも異例だ。通常は主査スタッフを経て主査になる人が多い。上司の打診に「いきなりですか?」と聞いてしまったと笑う。

商品本部 主査 竹内都美子氏。1974年生まれ、97年入社。2011年に女性初の車種担当(デミオ)。そして2015年、女性初の商品本部主査に。「女性初の商品本部主査。見える景色がガラリと変わりました」

「仕事がガラリと変わりました。以前は与えられた条件=Givenのもとで理想のクルマを開発していたのが、売り上げ目標や予算など、会社全体の視点でGivenを決める立場になったので。上司からも『竹内のロマンはわかるが、今はソロバン100パーセントで考えろ』と言われました」

竹内氏は、伊東氏を上回る「特A」ライセンスを持ち、評価ドライバーとしてのキャリアが長い。2011年から昨年までは、デミオの車種担当として(これも女性初)性能全般を統括する立場だったが、お客さんが喜ぶいいクルマをと開発に携わってきた竹内氏にとって、主査としての仕事は全く違ったものに感じられた。

笑顔を浮かべながら続ける。「ゼロから物事を考えるのは、違うアタマを使うので大変。私は、AではなくBにしよう! とテキパキと仕切るタイプのマネジャーではなく、相手が納得するまで話を聞くタイプです。でも主査の役割は、高い売り上げ目標を掲げつつ予算を抑えること。また、まだ情報を出せない段階でも、開発を進めなくてはいけない場合もある。開発陣からは不満も出ますが、開発者の気持ちがわかる私だから言えることもある、と気持ちを切り替えました」

実は、キティちゃんファンでもある。

「デスク回りにキティグッズを置いていましたが、主査になったので減らしました(笑)。今は引き出しにしまっています」。技術陣の女性たちも、「バリバリガツガツした女性管理職のイメージからはほど遠い、女性らしいところに憧れる」と口をそろえる。

撮影=遠藤素子、藤井泰宏