ZOZOTOWNのCFM(友達関係管理)は、CRM(顧客関係管理)とどう違う?

【清水】ネット通販におけるCRMは通常、顧客の年齢や性別、属性、購入履歴などを分析し、メールマガジンの送付などのプロモーションによって、さらにそのサービスの利用を促すものです。特に、それまで私が親しんできた従来型のCRMというのは、何度もそのサイトで買い物をしている優良顧客に焦点を当て、さらに囲い込もうとするもの。しかし、これは「スタートトゥデイらしいCRM」にはまったくなじみません。

原田博植(はらだ・ひろうえ)さん。株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部 アナリスト。人材事業、販促事業、EC事業にてデータベース改良とアルゴリズム開発を歴任。2015年データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー受賞。

そこで考えたミッションが、「一人一人の日々の行動や心の変化を見逃さず、その変化の裏側にある心のあり様を想像し、一人一人に合ったZOZOTOWNならではの気配り、思いやりを創造すること」というもの。これを代表の前澤に提案したところ、顧客と友達のような関係になることを目指すCFMという、スタートトゥデイらしいCRMのコンセプトをネーミングしてくれました。何度もZOZOTOWNで買い物をしているお客様も、初めてZOZOTOWNを利用するお客様も、どちらも友達のように思いやりを持って接し、喜んでいただけるような行動、ふるまいを実践するためのマーケティングを目指したのです。

具体的な施策としては、顧客ごとに合わせた約230種類のメッセージを、メール、LINE、サイトお知らせ、プッシュ通知などさまざまなチャネルから届けています。こうした施策経由の売り上げは、CFMの戦略を実施する前と比較すると、実施後は20倍近く増えています。

【原田】ビジネスの中で、「友達」という言葉が使われているのは珍しいですね。ネット通販もITも、テクノロジーを使った無機質なものという印象がありますが、対顧客関係も対スタッフ関係も、「情緒」を非常に重視されているという印象です。CFMも、情緒ありきでデータを分析し、顧客との「友達のような」関係づくりに生かしている。

サイトデザインから配送まで、外注せずすべて自社で

【清水】ZOZOTOWNができる前は、洋服のネット通販には「ダサい、格好悪い」と、あまりいいイメージがありませんでした。そこで、ファッションブランドの持つ世界観や、洋服を通して表現しようとしているものをくみ取ったサービス作りをしました。そのために、ネット通販としては珍しいと思いますが、サイトのデザインやシステムの開発、配送などを、外注ではなくすべて自社で行っています。