周囲の評価が高まる「釘付けトーク」入門●梶原しげる

「東北楽天イーグルス、勝っても負けても爽やかだ。でも、選挙は勝たなくてはいけないんです」

かつて小泉純一郎元首相が仙台での選挙応援演説で発した第一声だ。10秒もかからないごく短いトークである。でも、集まった群衆はこの一言で、文字通り釘付けになった。心理学で話し始めが最も相手の印象に残る現象を「初頭効果」という。

私は文化放送の新人アナウンサーだったころ、先輩から「しゃべりと時間はワンセット」という鉄則を叩き込まれた。その1つが「1コメント10秒以内で返す」テクニック。ビジネスマンも釘付けトークをマスターするなら、自分のしゃべりをストップウオッチで測ることをお勧めしたい。まず30秒から1分程度の「尺」を叩き込むといい。

というのも、人間は人の話が1分以上になると飽きてしまうからだ。実は、それを解決する秘策がある。

「定年退職した団塊の世代で、ボランティアに関心のある人が7割といいます。でも、実行できている人は一握りだというんですよ……」

「えっ、ボランティアなんて仕事じゃないんだから、その気になれば誰でも簡単にできるんじゃないの?」

「会社で地位があった人ほど“上司目線”になって、敬遠されるんです」

このように、(1)自分の話すボリュームをできる限り減らす、(2)相手に質問させる間をつくるようにすれば、話は対話型になる。「一方的に話す理屈っぽい人」と反発も買わない。

その訓練方法として「エンプティ・チェア」がある。椅子を2つ向かい合わせに置き、まず片方の椅子に座って自分がいいたいことを30秒から1分以内で話す。次に正面の椅子に座り直し、聞き手の立場になり、返答しやすい問いになっているかなどを確認するのだ。

(伊藤博之=文)