「やり遂げる人」と「途中であきらめる人」は何が違うのか

ポジティブ心理学における実践的なトレーニング法としてはもう1つ、「レジリエンス・トレーニング」と呼ばれるものがあるが、これは企業からも需要の高いものだ。現下のような厳しい経済状況にあっても人々が元気で日々を乗り切るための1つの対処法として注目されているトレーニングである。

レジリエンスとは一般に、「困難に打ち勝つ力」「挫折から回復・復元する力」などと説明される。この名称は今後、カタカナ表記でわが国に定着するものと思われる。あるいは、レジリエンスの訳語として、より洗練された日本語を求めるのであれば、一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏による「しなやかさ」という言葉が適切であろう。

英レディング大学のC・ヒレンブランド氏は、レジリエンスに関係する強みとして、(1)変化に対する順応性(柔軟性)、(2)希望(楽観性)、(3)忍耐力、(4)大局観、(5)社会的知能という5つの強みを指摘している。興味深いのは、「しなやかさ」という特徴が、こうした一連の強みの発現を可能にすることにも繋がる事実である。

では、希望(楽観性)や忍耐力といった強みがレジリエンスと深く関係しているというのはどういった構造によるものなのだろうか。米スタンフォード大学のS・リューボミルスキー博士は、「楽観とは状態であると同時に、目標を達成する道である」と定義する。

人は特に困難に直面したり、窮地に立たされたりしたときに、深く悩み苦しむことになる。その過程で、耐え抜くことや努力を重ねることの大切さを学び取るのか、あるいは絶望感に打ちひしがれて目標に向かうことを完全にやめてしまうのか。大雑把に分けて2通りのタイプがあるとすれば、楽観性を備える人は諦めない道を選ぶことになる。またそこには忍耐力が、諦めないことに伴う条件として重要となる。