医療と暮らしのニーズを結ぶ役割

乳がん患者のことだけではない、自分も含め形成外科医の未来も憂慮しているという。「僕の役割って場をつくることなのかな、と最近思うようになりました。医者の仕事って、それこそ医者が骨身を削って、善意の上になりたっているようなところがあります。過酷な労働現場なんです。特に僕たち形成外科医は、細かい手先の動きや視力が必要なので、内科の医師と比べて労働寿命が短くもある。そこの受け皿として、これから需要が伸びるだろう、美容領域に未来があるのでは? と思うんです」

前田さんは今、人と人とのつながりのあるところに積極的に出かけることにしている。その縁で、昨年からは北海道・札幌市の「札幌ル・トロワ ビューティークリニック Vogue」の院長として週4日勤務し、東京と往復する日々を送っている。形成外科医が美容医療で手腕を発揮できる、これを具現化したのが今のスタイルなのだという。

医療を通して、さまざまな人のQOL底上げの夢を描く前田医師の視線の先には、次に何が見えているのだろう。また数年後、話を聞いてみたい気持ちになった。

人と人をつなげて、新しいチームをつくる。「後進を育成して場をつくることも自分の役割」と語る前田さん。夢を語ると、こんな笑顔になるのです。
森 綾(もり・あや)
大阪府大阪市生まれ。スポーツニッポン新聞大阪本社の新聞記者を経てFM802開局時の編成・広報・宣伝のプロデュースを手がける。92年に上京して独立、女性誌を中心にルポ、エッセイ、コラムなどを多数連載。俳優、タレント、作家、アスリート、経営者など様々な分野で活躍する著名人、のべ2000人以上のインタビュー経験をもつ。著書には女性の生き方に関するものが多い。近著は『一流の女(ひと)が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など。http://moriaya.jimdo.com/

ヒダキトモコ
写真家、日本舞台写真家協会会員。幼少期を米国ボストンで過ごす。会社員を経て写真家に転身。現在各種雑誌で表紙・グラビアを撮影中。各種舞台・音楽祭のオフィシャルカメラマン、CD/DVDジャケット写真、アーティスト写真等を担当。また企業広告、ビジネスパーソンの撮影も多数。好きなたべものはお寿司。http://hidaki.weebly.com/

撮影=ヒダキトモコ