求められているのは共感力

【原田】ネットのコンテンツの世界で、谷口さんが注目している分野はありますか?

【谷口】ネットはすごい勢いでスマホが主流になっています。スマホは、人とのコミュニケーションが主体なので、共感力が求められる。この共感力は、女性の方がポテンシャルが高いんです。と言うわけで、最近、私は少女マンガを読んでいます。『トーマの心臓』なんてすごい。少年マンガって、ポカスカなぐって終わり。単純です。少女マンガは人間の内面を表現していて共感要素が高い。

コンテンツの業界では、女性の影響力が大きくなってきていますよね。「アナ雪」(アナと雪の女王)などは典型的ですが、女性が主人公のモノが多くなっている。女性にウケるものが世の中でウケるという時代になっています。

その一方で、なぜかネットのコンテンツの作り手は、ライターを含め、女性がすごく少ない。女性は慎重だから、Webのコンテンツ作りのような新しい職業に入るのには躊躇しているのかな? 正直私たちも、女性のコンテンツの作り手が少なくて困っているんです。これから間違いなく女性が優位になるので、今のうちに入ってきておいた方がいいと思います。

【原田】私も少女マンガが好きです。大島弓子さん、岡崎京子さん、ひぐちアサさんの世界観が好きです。谷口さん、お仕事は楽しいですか?

【谷口】楽しいです。前はずっと不安でした。企画を出す前はいつも「ウケるだろうか」とか考えて憂鬱(ゆううつ)でした。その不安を原動力にしてやっているところがありました。でも、最近は、もっとウキウキやらないとなあと思っています。「好き」とか「楽しい」の方がパワーになるような気がします。

■インタビューを終えて
谷口さん、ありがとうございました。新しいアイデアを出し続けるためには「失敗できる場を作り、スベり慣れることが必要」というのは、とても刺激的でした。もしかするとこれは、生真面目で優秀な女性ほど苦手としていることかもしれません。努力はしているのに仕事の伸び悩みを感じる、そんな時には谷口さんの仕事術を取り入れてみてはいかがでしょうか。谷口さん、これからも面白い広告を楽しみにしています。(原田博植)
原田博植(はらだ・ひろうえ)
株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部 アナリスト。2012年に株式会社リクルートへ入社。人材事業(リクナビNEXT・リクルートエージェント)、販促事業(じゃらん・ホットペッパー グルメ・ホットペッパービューティー)、EC事業(ポンパレモール)にてデータベース改良とアルゴリズム開発を歴任。2013年日本のデータサイエンス技術書 の草分け「データサイエンティスト養成読本」執筆。2014年業界団体「丸の内アナリティクス」を立ち上げ主宰。2015年データサイエン ティスト・オブ・ザ・イヤー受賞。早稲田大学創造理工学部招聘教授。

構成=大井明子 撮影=岡村隆広