経営数値の把握で働き方も変わる

いかがでしたか。決算書分析というのは、「足し算・引き算・掛け算・割り算」の四則演算と、「企業って利益が大きい方がいいんだよね」という基本スタンスが分かっていれば、計算、理解できるものなのです。その正確に計算することはもちろん大事ですが、決算書分析は、計算して数値を導き出すことが目的ではありません。経営、もっといえば社員それぞれが次の行動をどう変えていくのかを示す道しるべを決めるために行うものです。

例えば、ROAの式をもう一度思い出してみましょう。ROA=経常利益(あるいは当期純利益)÷総資産×100(%)で、「収益性×効率性」を表すのでしたね。この値が同業他社よりも低い値だということは、他社にくらべて総資産を効率よく売上に結び付けられていないことを意味しています。分解して、収益性と効率性のどちらが低いのか、低いなら何を改善すべきなのか細かく見ていくことが必要です。数値を見て現状を把握し、目標に近づけるために、日常業務の中で収益性を高める努力が必要なのか、効率性を高める努力が必要なのかという方向性をつかまないといけません。より短期間で成果を出すためには、“見当違いの努力”は大敵です。

決算書分析は、決算書が専門用語と数字の羅列であることに加え、分析指標としてたくさん数値が出てくるので、苦手意識を持つ人が多いようですが、「何のために計算しているのか」「会社にとってこの数値は大きい方がいいのか小さい方がいいのか」「前年の自社、同年の他社と比べてどうか」というように、「検証(Check)し、次に生かす」という観点さえ忘れなければ、興味を持てますし、仕事もより効率的にできます。決して難しいものではありません。

これをきっかけにみなさんが会社の決算数値に興味をもち、ご自身の仕事をどう変えていったらいいのかを考えてもらえることとなれば、こんなにうれしいことはありません。

小紫恵美子(こむらさき・えみこ)
株式会社チャレンジ&グロー代表取締役、経営コンサルタント事務所Office COM代表。2児の母。東京大学経済学部卒業後、大手通信会社にて主に法人営業に従事。1998年中小企業診断士取得後、のちに退職。10年間の“ブランク”を経て、独立開業。現在は企業研修講師や中小企業への経営支援、執筆活動を行う。企業研修では会計、ロジカルシンキング等ビジネススキルを伝えるとともに、女性経営者を中心に数値とロジックに基づいた経営の重要性を伝える自主セミナーを展開
最近は、これまでの実績と、自身の大企業勤務→専業主婦→子育てしながら独立開業、という経験を踏まえ、女性の働き方についての執筆や講演に力を入れている。「活き活きと働くオトナが増える社会」を目指して日々活動中。