ワークライフバランスで企業を選ぶ若い世代

わたしも4)についてはずっと気になっていました。しかしワークライフバランスの第一人者、佐藤博樹先生(中央大学)に聞いたところ「最初のときこそ、自分が時間内にきちんと仕事をするという感覚を身につけないといけない。もしストレッチをかけたかったら、その感覚を身につけた後に合宿でも何でもすればいい」ということでした。

またミレニアル世代と呼ばれる1980年代以降生まれの若者たちの動向も無視できません。Bentley Universityの論文によれば、2025年には世界の労働人口の75%がこのミレニアル世代に当たるそうです。

日本では「ゆとり世代」と重なるこの世代、アメリカと違って、日本での人数は少ないのですが、彼らはお金や「やりがい」だけでなく「時間」、つまりワークライフバランス度で企業を測ります。2060年には日本の労働人口は半減しますから、今から優秀な人材を囲い込むためには、「仕事が第一」「プライベートより仕事」という考え方の企業には優秀な人は来ない、または付加価値をつけた後に転職していってしまうでしょう。

またグローバル人材と多様性の中で仕事をする場合、暗黙のうちに「上司がいるうちは帰りにくい」という文化や風土は通じません。

人材獲得競争に勝つためにも、上限のある働き方を推進する理由は十分にあると思います。

長時間労働をやめるには?

さて、経営者が長時間労働をやめるためには、何が必要なのか?

まず36協定違反などの取り締まりを強化するということがあります。特別協定すら結んでいない企業もあります。

この問題に長年取り組んできたワークライフバランス社社長小室淑恵さんにインタビューしたところ、「規制が厳しくなるのはいいのですが、実は最近協定違反にならないように、36協定の特別条項が上限60時間だったところを、実態に合わせて80時間に引き上げるなどの動きもでてきている」ということです。

いくら強化しても、やはり上限がないことには、いたちごっこになります。一方で、小室さんがコンサルタントとして入った企業ではすでに、「労働時間は短縮し、売り上げも利益も増え、女性管理職が増え、残業時間を減らす前に比べて、1.8倍になった企業、2.7倍になった企業などの事例が出てきています。社員の子どもを持つ率も増えるという良い効果」がたくさん出ているそうです。

しかし、取り組む企業が増えるほど、「自社だけが取り組んでも、まわりが長時間競争ではフェアに競争できない。日本全体の長時間労働を変えてほしい」という政府のリーダーシップ、強い規制を望む声もあがっています。