――IEA(国際エネルギー機関)の本部はパリに置かれています。EU(欧州連合)を拠点にエネルギー政策をまとめる立場で、日本をどのように見ますか。

「EUは統合と多様性という相反する2つのテーマを同時に実現しようとしています。その結果、EUではリージョナル・ポリシーといわれながら、すべての政策がインターナショナルな性格を持ちます。しかしながら、日本のそれはあくまでリージョナル(都道府県)の域を出ません。日本のエネルギー政策には国際的な視点がありませんでしたし、政策当局者が国際的な人材競争力を持たなかったのは大きな失敗だったと思います」

――それは、エネルギー政策として具体的に何を指しますか。

「一国でエネルギーの安全保障を考える時代ではなくなったということです。安い石油と車文明に象徴される20世紀型は、石油備蓄が安全保障の役割を果たしましたが、エネルギー源が分散する21世紀型は全く違ったものになる。EUを見れば、ヨーロッパ全体が『一つのエネルギー市場』になりつつあり、ここが日本に欠けている最大のポイントです」

――現在の10電力体制(沖縄電力も含む)に問題があるということですか。

「IEAは、かねてから発送電分離を主張しています。日本も10の電力会社が別々ではもはや対応しきれませんから、東と西の周波数が違うのであれば、東西一つずつの電力会社にするアイデアは十分ありえます。それに加えて、韓国やロシアと電力網をつなげば環日本海グリッドができあがりますが、それはドイツが熱心に進める環地中海グリッドにも匹敵するものになり、これこそエネルギー・フォー・ピース、電力の平和利用の一歩になります」

※すべて雑誌掲載当時

(岸 宣仁=構成 的野弘路=撮影)