民泊の特区規定。
進んでいるのは緩和か、規制強化か

2016年1月27日に行われた大田区での説明会には100人の定員を超え、200人以上が集まり、立ち見が出たほどだったが、その内容が本当にAirbnbを解禁、安全に利用できるようにするものであったかについては疑問を抱かざるを得ない。同区が認定を申請するにあたっての基準は前ページ、国が決めた基準をベースにしたもので、宿泊日数は7日(6泊7日)以上、専有面積は25平方メートル以上、立地はそもそも旅館業が可能とされる用途地域に限定されており、具体的には第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域と3000平方メートル以下であれば第一種住居地域である。

1月27日に行われた第1回、東京都大田区の民泊説明会の様子。立ち見も出るほどの来場者に、関心の高さがうかがえる。

大田区の場合、蒲田駅、大森駅近くにはこうした用途地域が多いため、全域で見るとかなりの部分で可能にはなるが、区の西側に多い山王、池上、久が原、中馬込、西馬込、田園調布などの住宅街では不可となっている。今後、他区が同様の条例を作っても住宅街ではAirbnbの認定を受けることは難しいものと思われる。特区に認定されているエリア内で、用途地域の要件とダブルで制限を受けるからだ。

また、宿泊日数も東京都が平成24年度にまとめた国別外国人旅行者行動特性調査でみると、東京での宿泊日数は全体で4~6日が32%と最も多い。7日を基準に考えると、7日未満が70.6%、7日以上が23.3%となる。ここで7日以上という縛りがどう働くか。あまりプラスに働くとは思えない。

それ以外にも壁芯面積(壁の中心から測った場合の面積)で25平方メートル以上、設備上の要件を満たす物件はワンルーム以外では少ない、排出されるゴミが事業系ゴミとされるため、廃棄物処理業許可業者に収集を有料で依頼することになる、消防法上適法であることが求められるなどのハードルもあり、個人で空き部屋、空き家を貸すには面倒すぎる。今後、申請、認定が進むとして、その大半は企業による一定規模以上の経営になるだろうと思われる。

続いてもう一方の厚生労働省による規制緩和だが、これについては2段階で検討されている。1つは旅館業法の中でも比較的規制が緩い簡易宿所という業態を民泊に適用しようというもの。要件は緩和するものの、あくまでも旅館業法内に民泊を置こうとするもので、現状、無許可で営業(という意識すらないかもしれない)している人たちがわざわざ手間ヒマかかる許可を得ようとするとは思えない。もちろん、こちらでも用途地域の制限はかかってくる。

もう1つは家主が居住する戸建て住宅は、自治体の許可がなくても解禁するというもの。2016年2月5日の規制改革会議の作業部会で説明されており、宿泊者名簿の管理を求めるなど一定の規制をかける代わりに貸しやすくするという。つまり、業としての民泊には縛りを設けるが、個人が自分の住む一戸建てを活用する「ホームステイ型」については営業に当たらないと解釈するというわけだ。同会議のメンバーからは「家主のいない戸建て住宅やマンションについても、旅館業法の適用から外すべきだ」との意見があったそうだ。

最近ではもう1つ、内閣に設置されているIT総合戦略本部が民泊やライドシェアのようなシェアリングそのものに規制をかけようという動きもある。これは仲介事業者にホストの営業許可確認、ゲストの本人確認を義務付けようというもので、トラブルが起きた時の責任を事業者に求めることも検討されているという。同案に関しては国内外からのインターネット関連事業者からの反発が強く、このまま、規制案通りに進むとは思えないが、動向は全く不明。緩和と報道されてはいるものの、実態を知らないためか、本音では緩和したくないためか、遠慮があるのか、各種議論は迷走状態から抜け出せていないのが現状だ。