いつだって準備はできている!

本番まで中1日。でも、「今しかない」と、西野さんには寸分のためらいもなかった。

このアグレッシブな姿勢には、バレエ団の同僚たちも舌を巻いたという。「舞台の上でリラックスしていたのが信じられないって言われたのを覚えています(笑)。だって、やるべきことをやったら、舞台の上で焦ってもどうしようもないじゃないですか。私にとっては、舞台に上がっている時が一番リラックスできるんです。準備さえできていれば、あとは自分次第だと思います」

「チャンスって、いつ来るか分からない。1年後か、2年後か、10年後か。ひょっとしたら来ないかもしれない。だから、絶対に逃したくなかった。チャンスをつかんで絶対に自分のものにしたいと思いました」。そう語る西野さんのまなざしは、曇りがなくまっすぐだ。

ライブであるバレエの舞台に失敗はつきものだが、「準備ができてさえいれば、たとえ舞台の上で失敗しても、泣くことはないです」と言い切る。「もし準備ができてない状態で舞台に上がると、ものすごく悔いが残ると思います。150%練習して、舞台でコケる方がマシですね」

訪れたチャンスをつかむ勇気と、舞台で最大のパフォーマンスを発揮する余裕。そこには、でき得る限りの準備に裏打ちされた西野さんの自信がある。そしてもう一つはやはり「いつ来るかわからないチャンスを逃してはならない」という思いだ。

「もちろん、ビビってしまってノーと言うダンサーもいます。“I'm not ready”って。でも私は、“You never ready”(いつだって準備はできていない)って思うんです。母になるのもそうです。“今、子どもが欲しい”と願っても、思い通りにできるものではない。だから、妊娠が分かった時、“今これをつかみたい!”って思いました」

15歳でバレエ留学を決めてからというもの、西野さんの決断には迷いがない。

「それは、迷っている時間がないからです。バレエダンサーって、本当に短い期間しか踊ることができない。華は30歳ですね。それまでにどれだけ経験を増やして、華の時期をエンジョイできるかどうかです」