残業ゼロとセットの「標準化」と「見える化」

業務の標準化は「見える化」と対をなす。社内に部門別の残業実績や定時帰宅日実施状況、欠品率と在庫手持ち日数、あるいはプロジェクトの進捗などが一目でわかるように「見える化ボード」が掲示してある。

「確かに残業代も大きなコストですが、一番大きい目的は生産性を上げることです。ホワイトカラーの生産性を上げるのは一筋縄ではいきませんが、単に生産性を上げろといっても放っておくと通常のペースに戻ってしまいます。しかし人間は、締め切りがある、あるいは明後日に企画の提案や昇進試験があるとなれば、能率は通常の3倍や5倍に上がるものです。生産性向上を理屈で攻めてもいろんなエクスキューズが出てなかなか到達点に達しない。そうであれば、9時から7時という枠だけ決めてやるほうがずっと早いと考えたのです」

これまでに打ち出した施策も徐々に効果を上げている。従来60ページもあった販売計画の報告書をA4判3枚に限定し、会議での意思決定のスピード化を図るというやり方もその1つだ。同社は、2年半続いた30%委員会を廃止。2月1日に「業務標準化委員会」を発足し、改革の歩をさらに進める。

「従来の仕事のやり方の視点を変えた効率化に社員も慣れてきています。夜7時に退社しなければならないとなると、単なるガンバリズムではなく、10分、15分の時間で1つの仕事を終えるにはどうするかという効率化する工夫と訓練ができます」(松井社長)