その資産は本当に資産と言えるのか?

流動資産には、主に現金や1年以内の預金、1年以内の保有目的の有価証券、1年以内に回収できる売掛金や受取手形、企業の通常の営業活動で取り扱う商品や製品などが含まれます。通常、こうした「資産」はすべて、販売や回収によって現金化できるはずです。

しかし、残念ながら現金化できない資産も現実には出てきてしまいます。たとえば、売掛金や受取手形。取引とは、売上の計上は今月、実際の入金は来月末、などという契約に基づいて行われるものです。取引先の業績が順調であればよいのですが、前回の連載第2回で見たように、取引先の業績が悪化し、売上が現金で回収できないということが起こりえます。これを「貸倒れ(かしだおれ)」と言います。貸倒れは一定の確率で起こりうるという前提で、あらかじめ貸倒引当金という項目が設定されている場合もあります。

話を元に戻しましょう。流動資産にはこの売掛金や受取手形などが含まれています。したがって、流動資産がすべて「1年以内に現金化できる資産」とは言い切れないのです。そのため、「流動資産>流動負債」ならばいつでも安心、というわけにはいかなくなるのです。流動資産の中身をチェックして、それがいわゆる「不良債権」(現金化できないような資産)で多く占められていないかという点に注意しなくてはならないのです。

決算書から得られる情報はこれだけではありません。1年を超えて長期的に企業が安全かどうか、また収益性(稼げる会社か)、効率性(資産を効率よく使って売上に結び付けているか)についても知ることができます。

次回は、こうした財務分析について、イメージをしやすいように具体例を交えながら話を進めていきます。数値を読む”ことができるようになるだけで、会社の仕組みに対する理解力も、勤め先の経営状況に対する判断力もぐんと高まります。会社を楽しくサバイブするために、まずは数値を"読む"力を身に付けていきましょう!

小紫恵美子(こむらさき・えみこ)
株式会社チャレンジ&グロー代表取締役、経営コンサルタント事務所Office COM代表。2児の母。東京大学経済学部卒業後、大手通信会社にて主に法人営業に従事。1998年中小企業診断士取得後、のちに退職。10年間の“ブランク”を経て、独立開業。現在は企業研修講師や中小企業への経営支援、執筆活動を行う。企業研修では会計、ロジカルシンキング等ビジネススキルを伝えるとともに、女性経営者を中心に数値とロジックに基づいた経営の重要性を伝える自主セミナーを展開
最近は、これまでの実績と、自身の大企業勤務→専業主婦→子育てしながら独立開業、という経験を踏まえ、女性の働き方についての執筆や講演に力を入れている。「活き活きと働くオトナが増える社会」を目指して日々活動中。