【1】理解の間

――聞き手とのタイムラグを埋める「理解の間」は句読点でとる

一つ目の理解の間は、文章の句読点の間に入れていきます。文章の中で「、」の位置に当たるものには0.5秒の間、「。」の位置では、1秒程度の間をとってください。

聞き手は、あなたがこれからどんな話をするのか、全容が見えていません。そのため、今話されたことを処理するのに話し手が思っているよりも時間がかかるのです。この「発信側と受取側のタイムラグ」を埋めるのが「理解の間」です。この間によって、聞き手はそれまで聞いていた一連の情報を一つの固まりとして認識し、意味を判断して頭に収め、次いで次の情報を受け入れる準備が整うのです。

この間がないと、理解が追いつかない → 疲れて集中力が途切れる → 次の話が耳に入ってこない → 更に理解が追いつかない → 興味を失う……と負のスパイラルにどんどん陥っていきます。一度このループに入った人の意識を話に向けるのはとても困難です。

文章を読む場合には、「。」や「、」という記号や改行という区切りが目に見えるので、読み手はあらかじめどのくらいの分量の情報が来るのかが予想できますが、話を聞く場合には予想がつきにくいので、話し手は句読点を表現するつもりで、理解の間を入れます。

理解の間では単に時間をあけるだけではなく、間(ま)の間に聞き手の反応を見るとよいでしょう。話についてきているか、理解できずにいるのか、疑念を抱いているのか……ということを確認しましょう。しっかりとこちらを見ていれば、理解できていますし、首をかしげたり、眉を寄せたりしていれば、話についていかれていなかったり、内容に疑問を抱いている可能性があります。明らかに眠そうだったり、PCやスマホを操作しているようだと、全くついてきていないか、聞くのを放棄したということです。

相手がついてきていないと分かった場合に、そのまま話し続けるのは、負のスパイラルがどんどんと進んで取り返しのつかない状態になってしまう、とても危険な行為です。相手が心の中で、「この話は理解できない。聞く価値なし」という状態に至る前に対応する必要があります。

例えば「ここまでの話はご理解いただけましたか?」と理解レベルを確認したり、「少し違和感を感じている方がいるようですね」など聞き手の疑念を受け止めて、違う表現で話してみましょう。

折角、理解の間をとっても、理解されていなければ無意味です。聞き手を置き去りにしないように、理解の間で反応をつかみましょう。