なぜなら、周りが見えていることこそが女性の特徴であり、女性のアドバンテージでもあるからだ。家庭を持つとは、家族が同じチームとなって一つのゴール、「幸せ」を今後の人生を共にして実現しにいくことであり、みながステークホルダーになることであり、だからチーム内の意向調整が必須なのだ。もし、「嫁ブロック」を受けた夫がそれを恥ずかしく思ったり、不満を膨らませたりしているとすれば、その夫と妻が見ている方向はバラバラだ。すなわち、調整が失敗しているということであり、家庭内チームワークの危機なのである。

妻には妻の、夫には夫の意向や言い分があり、それを話し合い調整して初めて、夫婦として機能する。だから、工藤静香の「嫁ブロック」をのんで(もちろんそれだけが理由ではないと思うけれど)事務所残留を決め、あとはじっと口をつぐむキムタクは、仕事人としても家庭人としてもさすが一流。その男前ぶりにあらためて惚れる。

SMAP解散と事務所移籍という、まさにこれまでの「夫プロデュース」における最大の危機を前にして、自分たちトップアイドル同士が結婚する時に守ってくれた事務所への恩義を第一の理由にしたと報道されている工藤静香の心意気にも、あらためてシビれる。そう、この夫婦は、ジャニーズ残留を「2人で決めた」のだ。

河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。