(2)変革構想を取り組みやすい大きさに分解して打ち出そう

何年もかけて組織全体を変革するプロジェクトは、個々の社員や作業グループにとってはとてつもなく大変だと感じられるかもしれない。プロジェクトをいくつかの段階やステップに分解して、暫定的な目標を設定しよう。「巨大なプロジェクトは小さく分解して打ち出す。そうすれば、変革の機運や進捗状況を見せることでコミットメントを引き出すことができる」。こう語るのは、コンサルタント会社、ストラクティクス・グループの社長、ピエール・ムリエだ。ムリエはスタンダード・チャータード銀行のCRM実施アドバイザーを務めているが、総費用8000万ドルのこのプログラムは、香港市場に限定した200万ドルの初期プロジェクトから始められた。

 「小さく分解すること」には中間管理職の変革に対する脅威を緩和する効果もある。巨大航空機メーカー、ロッキード・マーチンは、2000年1月に「LM-21(ロッキード・マーチン-21世紀)オペレーティング・エクセレンス」という変革プログラムを開始した。目標は本社が買収した18の企業を統合して、業務の合理化、たゆみない改善、顧客の視点からの最適価値を実現することだった。

この変革プログラムには、管理の本質は問題を限定し、解決策を現場の人間に任せることにあるということを中間管理職に認識させるという目的もあった。「マネジャーの多くが、現場の人間に任せるなんて精神病院を患者の手に渡すようなものだと思っていた」と、ロッキード・マーチン本社の副社長でLM-21責任者、マイケル・ジョイスは言う。「しかし、私は彼らにこう言った。『われわれが君たちに要求していることのすばらしさは、小規模な変革を行って、それをテストできる点にある。うまくいくかどうかやってみようではないか。うまくいかなければ修正できるのだから』。その命綱を投げてやってからというもの、昔のやり方に戻った例はまだ一つもない」。

LM暫定目標は今ではすべて達成され、なかには目標を上回っている分野もある。