家賃15万の壁。一戸建ての賃貸市場を検証する

前ページまでマンションの話をしてきたが、一戸建てはどうだろう。率直にいってマンションより厄介である。というのは、賃貸市場では一戸建ては全体に非常に少なく、相場が成立していない地域があるためだ。

例外もあるにはある。ファミリーの場合、一戸建てを借りたいというニーズは確実にあり、不動産投資の世界では最近、地方の一戸建て投資が盛り上がっているほどなのだ。だが、それは指値(買い主が希望する購入価格のこと)を入れて買った数百万円から1000万円しない中古を自分でリノベーションして貸すというようなやり方に限られ、普通に消費者として一般的な住宅、特に建売新築一戸建てを購入した場合に、そのローン支払い額を賄えるような貸し方は、マンション同様、非常に難しい。

一戸建て、マンションともに賃貸市場では賃料が15万円を超すと貸しにくくなり、20万円を超すと非常に難しくなってくる。立地が良く、建物のグレードが高ければ貸せないこともないが、そうした物件は5000万円前後の予算では購入できない。つまり、「貸せる物件」は実現できないことはないが、その道のりはかなり厳しいということである。

都市部ならではの賃貸方法でチャンスも!

ところで、ここまで住宅として貸すという話をしてきたが、それ以外の用途で貸すという手もある。オフィスや店舗、併用住宅などとして貸すという手である。たとえば都心近くのマンション、一戸建てであれば、個人オフィスとしてのニーズがあるし、住宅街の中の一戸建てであればサロン兼住居という借り方を望む人もいる。

賃料としては住宅以外の用途のほうが高く設定できるため、もし、貸せるのであれば住宅以外の貸し方も選択肢のひとつ。ただし、サロンであれば玄関や水回りを住居と店舗で分ける必要があるなど、業種によって制約があるのでなんでも可というわけではない。用途地域の制限から開業できない業種がある場合もある。

中川寛子
東京情報堂代表、住まいと街の解説者、日本地理学会会員、日本地形学連合会員。
住まいの雑誌編集に長年従事。2011年の震災以降は、取材されることが多くなった地盤、街選びに関してセミナーを行なっている。著書に『キレイになる部屋、ブスになる部屋。ずっと美人でいたい女のためのおウチ選び』『住まいのプロが鳴らす30の警鐘「こんな家」に住んではいけない』『住まいのプロが教える家を買いたい人の本』など。2015年11月には『解決!空き家問題』(ちくま新書刊)が発売されたばかり。