【川崎】それは、今の上司の世代というのは、そのもっと上からも話を聞いてもらったことがないからなんですよ。なぜなら、聞く方よりも、話す方がエライからです。トップダウンの経営がうまく行っていた時代は、どんどん上から話も落ちてくるからそれでよかった。でも今はどちらかというとボトムアップで、部下からいろんな意見を吸い上げなくてはいけない。だから、話を聞けない上司というのは、もう、その時点でダメなわけです。

今はそういうコーチングスキルとか聞くスキルが重要なのにも関わらず、自分がやってもらったことがないことって、なかなかできないんですよね。だから、そこを変えるのが辛そうです。みなさん、ワークも一生懸命やってくれるんですよ。でも「ああ! またなんか上から言っちゃった!」と言って苦戦している(苦笑)。「○○さんは、今、聞き役ですよ」って言うんですけど話してしまう。人間は話したいものですし、「この年だから」「上司だから」というのが刷り込まれちゃってて、なかなか難しいみたいなんです。

【田中】50~60歳くらいの世代の人だと、男らしさの定義がまだ「乱暴」「不真面目」「大ざっぱ」みたいなところだったと思うんです。僕の世代も正直そうですけど、ご飯の食べ方が汚くても、字が汚くても、男の子だからまあいいんじゃないって、男性はちょっと雑でも許されてきたんですよ。だからそれが、人の話を聞くとか、繊細さが要求される場面になると、著しく弱いっていうところにつながってるのかなと思います。

――今日のお話を伺っていて、これから男女ともに生きやすい社会を作るためには、男性側も女性側も、共に認識を改めなくてはならないことが多々あると気づかされました。どうもありがとうございました。(終)

●“女のプロ”川崎貴子ד男性学”田中俊之 対談記事一覧
第1回 結婚を不安視する男、幻想から離れられない女
http://woman.president.jp/articles/-/866
第2回  「結婚はコスパが悪い」という男性が結婚を意識するのはどんなとき?
http://woman.president.jp/articles/-/893
第3回 上司をおだてることは、会社の不利益である
http://woman.president.jp/articles/-/896
第4回 女性たちよ、管理職になれ!
http://woman.president.jp/articles/-/903
第5回 結婚したいのにできない人に必要なこと
http://woman.president.jp/articles/-/925
第6回 「減点法」コミュニケーションの行く先は、破局しかない
http://woman.president.jp/articles/-/926
第7回 男はつらいよ~男は「競争」、女は「協調」
http://woman.president.jp/articles/-/927
最終回 「夫が家事を主体的にやってくれない!」となぜ怒ってはいけないのか
http://woman.president.jp/articles/-/928
川崎貴子
1997年に女性に特化した人材コンサルティング会社、株式会社ジョヤンテを設立。経営者歴18年。女性の裏と表を知り尽くし、人生相談にのりフォローしてきた女性は1万人以上。プライベートではベンチャー経営者と結婚するも離婚、そして8歳年下のダンサーと2008年に再婚を経験、「女のプロ」の異名を取る。9歳と2歳の娘を持つワーキングマザーでもある。著書に、『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』(総合法令出版)、『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』(KKベストセラーズ)など。
田中俊之
武蔵大学社会学部助教、博士(社会学)。1975年生まれ。社会学・男性学・キャリア教育論を主な研究分野とする。2014年度武蔵大学学生授業アンケートによる授業評価ナンバー1教員。男性学の視点から男性の生き方の見直しをすすめ、多様な生き方を可能にする社会を提言する論客としてメディアでも活躍中。著書に、『<40男>はなぜ嫌われるか』(イースト新書)、『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』(KADOKAWA)など。

構成=すずまり(鈴木麻里子)