NYでギャラリーのオープニングに行くと、必ず香川県直島にあるベネッセアートサイトの話題が出てきます。直島が2000年に「コンデナスト・トラベラー」というアメリカの旅行誌で「次に見るべき世界の7つの聖地」として紹介されたこともあって、特にニューヨークのお洒落なアート関係者の間では、「直島までどうやって行ったか?(フェリーorクルーザー)」とか、「ジェームズ・タレルとウオルター・デ・マリアは仲が悪いらしいのに同じ空間に作品があるんだって?」といった話がパーティーの話題にのぼるのです。直島でしか見られないアート作品がたくさんあり、四国の小さな島である直島のベネッセアートサイトを見るために、わざわざ来日する人だっているのです。

二の丸美術の木下コレクションの贅をつくした根付の数々がくっきり見える。(写真:掛川現代美術研究会)
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二の丸美術の木下コレクションの贅をつくした根付の数々がくっきり見える。(写真:掛川現代美術研究会)

2004年に開館した石川県金沢市の金沢21世紀美術館は、昨年6月、入場者数が500万人を突破し、まだ更新を続けています。たった4年で500万人というのは快挙と言っていいでしょう。もともと歴史ある北陸の古都、金沢市に現代美術館が出来るという話が起きた時、地元の反対の声は少なくありませんでした。しかし関係者の大英断は間違っていませんでした。歴史ある金沢だからこそ、現代アートと日本文化の伝統的なアートという、対極を成した作品の比較が観客にとって楽しいのです。金沢にも海外からのお客様が増えていて、建築家ユニット、SAANA(妹島和世&西沢立衛)が担当した建物を見るために、建築を学ぶ学生も世界中から訪れます。

また、昨年オープンした青森県の十和田現代美術館にも常設展示の現代アート作品を見るためにたくさんの人々が訪問しているようです。金沢も直島も十和田も、決して便利な場所にあるわけではなく、むしろ行きにくい場所にあるわけですが、TVなどに頻繁に出演している人気アイドルまでオフの時間を利用して訪問するそうですから、現代アートの人気と若い世代と外国人を惹きつける何か魅力があるのでしょう。昨年、日本にも観光庁が発足し、JVC(ビジット・ジャパン・キャンペーン)に弾みがつきましたが、金沢も直島も「現代アートで地域活性化の成功例」として紹介されています。素晴らしいことだと思います。

実は私も小さい規模ながら、現代アートで地域の活性化を試みています。それが静岡県掛川で毎年2月に行っている掛川現代アートプロジェクトです。私の本「現代アート入門の入門」(光文社新書)を読んだ掛川在住の山本和子さんという有志で掛川現代美術研究会を主宰している方と知り合い、掛川駅前から掛川城、そして隣接する二の丸美術館を巻き込んだアートイベントの企画提案の依頼を受けました。二の丸美術館は基本的に日本美術を中心とした美術館で、私のフィールドである現代アートの美術館ではありませんでしたが、「現代アートはコミュニケーション」ということなので、何か面白いことが出来るはずだという確信がありました。