女の年収が上でもいい。大事なのは「合算した収入」

――田中さん、実際問題としてどうなんですか。男性側では、例えば女性からプロポーズされたらイヤなものなんですか。付き合ってくださいと女性から言われるのはどうなのでしょう。

【武蔵野大学 社会学博士 田中俊之(以下、田中)】今は過渡期だと思うんです。今から20年くらい前の若者だったら、年収でも学歴でも身長でも、なんでも妻のほうが上なのはイヤだ、という人は結構いたでしょう。でも今は過渡期だから、両方いるんです。つまり「妻のほうが年収が上だったらどう?」って聞いたら、「やっぱりそんなのイヤですよ」という子もいれば、新しい流れとして大変それはラッキーである、と考える子もいる。これって、非常に現実的な判断ができていていいなと思うんですよね。だって重要なのは、世帯としていくらお金があるかということなわけで、夫と妻とどちらが上だろうが下だろうが関係ないんですから。

【川崎】そうなんです! それが重要なんですよ。

【田中】ただ、全員がそう思えるようになるかというと、やっぱり難しいのは難しいですよね。「男のほうが上じゃないと」という世間のイメージもあるし、それを強く内面化している人であれば、やはりそれはNOって思ってしまうかもしれないし。でも、川崎さんとぼくが目指しているところは、非常に似てるなと思いました。ありもしないイメージに振り回されてると、肝心な部分がゆがんでしまう。しっかり現実を見た方がいいと思いますよ。

若い男性が結婚を恐れる理由

武蔵大学助教 田中俊之さん

【田中】で、結婚について言えば、メディアが悪いんですよ。特に結婚情報誌が悪い。「平均でいくらかかりますか?」って挙式費用や指輪を足していくとね、600万円から700万円かかるんですよ。それをさっき川崎さんがおっしゃられたように「もしかしたらぼくが全部負担しなくちゃいけないかもしれない」と思ったら、それは20代の男性は「そんなの無理!」って思いますよ。

仮に30代で500万円ほど貯金があったとしても、それがゼロになると思ったら、とてもやっていられないでしょう。そもそも500万、600万なんてそんな貯金がない人もいっぱいいるはずです。だからそういう情報に流されて、「あぁ、やっぱり結婚式ってこれくらいやんなきゃいけないのかな」とか「こうしないといけないんじゃないか」という考え方をするよりも、自分たちがどうしたいのかということをしっかり考えるほうがいい。それができれば、あまり振り回されずに済むんじゃないかと思います。

現実を見ることと、自分がどうしたいのかを考えること、この2つが非常に大事かなと思います。結婚式くらいしないと親ががっかりするじゃないかとか、メンツが立たないんじゃないかとか、そういうことはあんまり考える必要はないんです。あくまで自分たちがどうするか、どうしたいか、それをしっかり認識して行動していけるということが大事だとぼくは思いますね。