――大塚家具は中長期計画で、中価格帯へ顧客を呼び戻すという目標を掲げています。しかし、低価格チェーンの出現によって、消費者は、そこそこの品質でデザイン性の高い安価な家具、という選択肢を手に入れました。ファッション業界でも同じ流れがあります。ファストファッションかラグジュアリーブランドか。極端な2択がクローズアップされ、事実、中価格帯のメーカーやブランドは苦戦しています。家具での中価格帯はどう戦っていきますか。

昔も今も中価格帯が弊社の売り上げの8割を占めていますが、近年、部屋づくりへの関心がとても高まっていますので、さらに多くの顧客を獲得できると考えています。

生活に欠かせない衣食住のうち、住まい環境だけは毎日変えることができません。食べ物なら、今日はファストフード、明日は三ツ星レストラン、明後日は母の味とさまざまな選択があります。服も同じで、今日はカジュアルだけど明日は行事があるからフォーマルで、といった選択が可能です。TPOに合わせたからといって、その人の根幹に関わることではありません。

けれども、よほどの富豪でもない限り、家具やインテリアは一つしか選べませんよね。そうなると極端な2択はしにくいのではないでしょうか。毎日同じ椅子に座り、毎日同じテーブルを使う。住まい環境は、その人の本質的な生活のあり方を反映します。つまり、その人自身の生活の基盤で、根幹に関わるものです。

人は、住まい環境のフィードバックを受けながら生きていると思います。「座り心地はそんなに良くないけれど、とりあえず座れればいいや」となんとなく選んだ家具と、古典的な名作とされる家具は、やはり大きく異なります。名作家具は誰が見ても美しいと感じる佇まいがあり、生き残るにふさわしい意味がある。

名作家具でなくても、きちんとした工房で丁寧に作られたものは使い心地が良いものです。そんな家具のある住まい環境は、日々にほのかなワクワクや安心感を与えますから、価格に見合う価値があると思います。

また、家具は捨てるにしても費用がかかる場合が多いですよね。なんとなく買った家具にすぐ飽きたり、使い心地が悪かったりすれば、費用をかけて捨てることになります。手間とお金がかかるうえ、エコじゃない。我慢して使い続ければ、毎日不満を抱えて暮らすことになる。その点に気づき、居心地が良く、自分らしい住まい環境を整えたいと考える方が今、増えているのではないでしょうか。

ほんの少し頑張れば、手が届く良質な家具が揃っているなら選択肢に入れる、というお客様にぜひ弊社を念頭に置いていただきたい。従来の会員制システムで選択肢から除外されるなら、本意ではありません。それは消費者が持つべき選択肢を狭めることにつながります。

私どもは、お客様が幸せになる家具をご提案し、ご提供したい。お客様の日々の暮らしを豊かにする住まい環境づくりのお手伝いをしたい。

ですから、まずは「手が届く価格の良質な家具を豊富に取り揃えています。どうぞお気軽にご覧になってみてください」と申し上げたいです。品質には自信がありますし、価格もご納得いただけると思います。これからの時代、住まい環境においては、良質な中価格帯家具をお選びになるお客様が増えるはず。弊社がその受け皿になりたいと思っています。