<まえがき>

はじめまして!アートプロデューサーの山口裕美です。これから、今、世界で盛り上がってきている、現代アートのお話をわかりやすく、ポイントを絞って講義したいと思います。ぜひ楽しんでくださいね。

アートバーゼル会場入口
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アートバーゼル会場入口

さて、現代アートというと「難しい」「わかりにくい」と思ってしまう方も多いと思います。しかし2008年春の「アートフェア東京」には4日間で4万3千人の人々が訪れ、総売り上げは10億円に達しました。大きなアートフェアだけではなく、神楽坂のアグネスホテルを会場にした「ART@AGNES」や大阪の堂島ホテルを会場にした「ART OSAKA」などにも多くの人々が集まっています。世界で最も権威があるアートフェア、「アートバーゼル」では5日間に6万人の人々が集まるだけではなく、世界有数のコレクターが集まり、総額100億円以上の売り上げがあります。従来の「印象派」や「後期印象派」の展覧会だけではなく、現代アートの作品に人々が関心を持ち、展覧会に足を運び、作品を購入している状況があります。

<strong>「The Golden Calf」 Damien Hirst</strong><br>(本体のサイズ/215.4×320×137.2 cm)<br>・落札予想価格:£8,000,000-£12,000,000<br>・落札価格:£10,345,250
「The Golden Calf」 Damien Hirst
(本体のサイズ/215.4×320×137.2 cm)
・落札予想価格:£8,000,000-£12,000,000
・落札価格:£10,345,250

例えば、2008年5月14日のNYのサザビーズのオークションで、1998年に制作された村上隆さんのフィギュア立体作品「マイ・ロンサム・カウボーイ」が1516万ドル(約15億9500万円)で落札されました。3月に別のオークション会社クリスティーズで鎌倉時代の作とされる国宝級の運慶の仏像が1280万ドル(約13億4700万円)であったことと比較すると、その凄まじさがわかります。今、現存する村上隆さんの作品が古美術の名作より高価だったのですから。

ところが、9月15日と16日のロンドンのサザビーズのオークションからはさらに驚かされるニュースが飛び込んできました。イギリス人の現代アーティスト、ダミアン・ハーストの作品223点がオークションで、落札総額1億1150万ポンド(約211億円)に達し、それまでのピカソのオークション記録を大きく塗り替えたというものでした。たった一人のアーティストの作品がそれだけの経済効果を生むとは、驚きと共に恐ろしさを感じるほどです。

今回のダミアンの場合は、アーティストがギャラリーを通さずに直接、オークション会社のサザビーズに出品する、という前代未聞の手法をとったこともあって、世界中のアート関係者が注視していました。リーマンブラザースをはじめとする米国に端を発した金融不安が世界中にあふれている中でのこの落札価格は、現代アートの興隆の力強さを物語ることになりました。