本物の「投資」とは「お金による事業参画」だ!

結論から申し上げれば、世間の多くの人たちが「投資」だと勘違いしている行為は、単なる「売買」のこと、カタカナで言うならトレードです。売買とは読んで字のごとく、買って売ってを繰り返す行為で、証券会社の店頭に来て、毎日株価ボードを見ているおじさんたちは、大方この類です。「投資」との最大の違いは、「時間」という概念が欠如していることでしょう。必然的に短期売買となり、リターンをもたらす源泉は「時間」に代わり専ら価格変動となります。

それこそ株式市場における株価が常時変動を続ける中で、ある方向の値動きに賭け、当たった者がリターンを享受します。短期売買はそのトレードの繰り返しで利益を積み上げていくゲームであり、これは決して「投資」ではなく、相場に勝負を挑む「投機」なのです。

そして「投機」の対象はあくまでも値動きを当てることですが、日々の値動きは結局市場参加者の欲望と恐怖、といった感情・思惑で動いているものなので、合理的に当てることはできません。つまり目先の株価が上がるか下がるかを当てるのは、サイコロでチョウかハンかを当てることと同様、ギャンブルなのです。

もちろん短期売買は悪い行為だと言うわけではないですが、一般的にこうした「投機」を「投資」と混同したならば、それは決して「投資」を良いイメージとは捉えられないであろうことも納得できます。両親から「株式投資なんて絶対やっちゃだめよ!」と言われて育てられた人も多いわけで、明らかに「投資」への誤解がその原因でありましょう。

ではプレジデントウーマンオンライン読者の皆さんに行動していただきたい、本物の「投資」とは?

再び結論を申し上げます。本物の「投資」とは、「社会的需要に裏打ちされた事業・ビジネスが必要とする資金を融通する行為」であり、「お金による事業参画」であるのです。

何を言っているのかよく分からないと言う読者さん、ごめんなさい。大上段で小難しい表現になりましたが、この定義こそが「投資」の本質であり、「投機」との最大の違いは、時間的価値という概念を必定とするもので、畢竟(ひっきょう)本物の投資は長期投資になる、ということです。

「脱・預金バカ」への行動規範として皆さんに実践してほしい、本物の投資=長期投資の考え方を、次回は徹底してやさしく深掘りしていきましょう。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信株式会社 代表取締役社長。1987年明治大学商学部卒業後、現在の株式会社クレディセゾン入社。セゾングループで投資顧問事業を立ち上げ、海外契約資産などの運用アドバイスを手がける。その後、株式会社クレディセゾン インベストメント事業部長を経て2006年に株式会社セゾン投信を設立、2007年4月より現職。米バンガード・グループとの提携を実現し、現在2本の長期投資型ファンドを設定、販売会社を介さず資産形成世代を中心に直接販売を行っている。セゾン文化財団理事。NPO法人元気な日本をつくる会理事。著書に『投資信託はこうして買いなさい』(ダイヤモンド社)、『預金バカ』(講談社)など。