“売上のかんぽ”と“利益率のゆうちょ”を支える日本郵便

日本郵政の売上No.1は生保だということが分かりました。それでは、利益面はどうでしょうか。売上が巨額であってもきちんと利益を出していなければ意味がありません。企業にとって最も大事なのは最終的な取り分のため、利益は欠かさずにチェックしたい経営指標の1つです。

日本郵政の連結財務諸表によれば、2015年3月期の経常利益は1兆1158億円、当期純利益は4826億円です。経常利益率は7.8%、当期純利益率は3.4%の計算となり、ごく一般的な利益水準と言えます。

日本郵政 セグメント利益の内訳

事業部ごとの利益構成は図「日本郵政 セグメント利益の内訳」の通りです。1兆円のセグメント利益のうち最も大きな割合を占めているのは、売上の最も多い生命保険ではなく、銀行業だということが分かります。銀行業は当期純利益率が20%を超えることも決して珍しくなく、一般的に高収益です。同じように日本郵政においてもゆうちょ銀行を中心とする銀行業の収益性が最も高く、セグメント利益における利益率は27%です。これに対して生命保険業の利益率は5%程度で、利益が4926億円。売上がゆうちょ銀行より8兆円以上も多いのにも関わらず、利益は769億円少ない結果となっています。

なお、その他の事業には宿泊事業や病院事業などが含まれます。関係会社からの受取配当金を1千億円以上収益計上したことから、セグメント利益の構成割合が12%となり銀行と生命保険の次に高くなっています。

2015年11月4日に日本郵政、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の3社は同時に上場し、1987年のNTT以来の大型上場として世間から大きな注目を集めました。配当利回りが最も高いということもあり、3社の中で最も人気高かったのはかんぽ生命保険です。ただ、売上高はかんぽ生命保険には及びませんが、利益面で優れているのはゆうちょ銀行です。売上高や配当利回りも大事ですが、投資をする際は利益にも着目すると、違った側面が見えてくるのではないでしょうか。

また、かんぽ生命保険とゆうちょ銀行を支えている日本郵便の存在も無視できません。薄利ですが、保険業と銀行業の売上アップに一役を担っている日本郵便。1つの会社を他のグループ企業との関連性で捉えると、また見方が変わってくることもあるのです。

秦 美佐子(はた・みさこ)
公認会計士
早稲田大学政治経済学部卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格し、優成監査法人勤務を経て独立。在職中に製造業、サービス業、小売業、不動産業など、さまざまな業種の会社の監査に従事する。上場準備企業や倒産企業の監査を通して、飛び交う情報に翻弄されずに会社の実力を見極めるためには有価証券報告書の読解が必要不可欠だと感じ、独立後に『「本当にいい会社」が一目でわかる有価証券報告書の読み方』(プレジデント社)を執筆。現在は会計コンサルのかたわら講演や執筆も行っている。他の著書に『ディズニー魔法の会計』(中経出版)などがある。