年末調整では控除できないものがある

一方、年末調整で処理できない所得控除もあります。「雑損控除」「医療費控除」「寄附金控除」です。こちらの所得控除に該当する人は、別途、確定申告を行う必要があります。

【雑損控除】

雑損控除とは、現金や家・家財といった生活に必要な動産が災害・盗難・横領などで被害に遭ったときに受けられる控除です。

雑損控除では、被害の規模が大きかった場合、翌年に控除を繰り越すことができます。例えば、火事に遭って家が焼失し、その人の1年間の所得金額以上の損失が生じてしまった場合、雑損失の「繰越控除」が可能です。つまり、1年間の所得金額から差し引きできない損失は翌年以降3年間、その損失を持ち越して翌年や翌々年の所得控除として再利用できます。

【医療費控除】

基本的に、治療や診療のための通院や薬の購入であれば、医療費控除の対象になります。同じ通院でも、美容目的や人間ドックを受診するだけの通院では医療費控除の対象になりません。人間ドックを受診し、重大な疾病が発見されて治療した場合は、その人間ドック費用も控除の対象になります。

また医療費は、自分の分だけではなく、家族の分も合算できます。

医療費控除の額は、「支出した医療費の額-保険金等の額-(『課税標準の合計額×5%』、もしくは『10万円』のうち少ない方)」という計算式で求められます。「医療費が10万円を超えないと、控除の対象にならない」と思っている方がいらっしゃるかもしれませんが、会社員の場合、年収が311万6000円未満であれば『課税標準の合計額×5%』が適用されるため、医療費が10万円を超えなくても医療費控除を受けられます。

【寄附金控除】

寄附金控除とは、国や地方公共団体など特定の団体に寄附(以下、特定寄附金という)をした場合、所得控除を受けられる仕組みです。近年人気が高まっているふるさと納税も、この寄附金控除に該当します。

話題の「ふるさと納税」は、寄附金控除に当てはまります。

ふるさと納税を「住民税の納付先を自由に選べる」と誤解している人もいるようですが、実はそうではありません。援助したいと思うふるさと、つまりは地方公共団体に寄附することで所得控除が適用され、その年の所得税と翌年の住民税が軽減されるというものです。またふるさと納税の寄付金控除は、2015年4月より寄附先が5カ所までで要件を満たす場合は確定申告が不要になりました。