違いがあまりよくわからなければ、「こんにちは」「おはようございます」「ありがとうございます」といった、日常でよく使う言葉や挨拶を文字にしてみるといいかもしれません。自分が目指したいカテゴリーに合わせ、どこの音を高くすべきか印をつける。「社会的望ましさ」の人は一番最初の文字、「親しみやすさ」の人は一番最後の文字が一番高い。「活動性」の人は2音目で、そこからどんどん低くなる。全部のカテゴリーを発音してみれば違いがわかるようになります。

それでもよくわからない、というときは、音声Non verbal(非言語)のスキルを上げる手っ取り早い方法があります。それは手本になる人物を徹底して「真似る」ことです。同性の、できれば自分よりキャリアが上の「こんなふうに話してみたいな」と思うロールモデルを見つけてください。そして、その人がお客さまにどのように名乗っているか、電話ではどのような話し方をしているかをよく聞くのです。それを徹底的に真似ることで声の高低から息づかい、間合い、ピッチ、速さも習得することができます。

職場にそんな人がいない場合はどうするか。そのときは同じ会社、もしくは取引先、あるいは業界で「なりたい」レベルの人を見つけましょう。やはり職業にはその職業らしい音声Non verbalがあるので、同じ業種がベストです。それでもいなければ、主人公が自分と同じ職業のドラマや映画がないか探してみてください。オフィスドラマなら、その配役の中から一人手本を決めてもいいかもしれません。

今回お伝えしたかったのは、日常会話の音程を上手に生かすということです。日常の言葉にも、歌のような音の感覚がある。それを意識して意図的に話し方を変えてみると、印象操作の効果を実感できるはずです。

矢野 香
信頼を勝ち取る「正統派スピーチ」指導の第一人者。NHKキャスター歴17年。大学院で心理学の見地から「話をする人の印象形成」を研究し、修士号取得。現在、国立大学の教員として研究を続けながら、政治家、経営者、上級管理職などに「信頼を勝ち取るスキル」を伝授。全国から研修・講演依頼があとをたたない。著書にベストセラー 『その話し方では軽すぎます! エグゼクティブが鍛えている「人前で話す技法」』(すばる舎)など。http://www.authenty.co.jp/

構成=坂口さゆり イラスト=米山夏子