やりたいことを実現するには、周囲の人々を味方につけることが大事です。この連載では、研修・講演依頼があとをたたないスピーチコンサルタントの矢野香さんに、他者に好印象をもってもらうスキルについて聞いていきます。

あなたは「すみません」が口癖になっていませんか?

本来「ありがとう」でいいはずの場面でも、つい「すみません」と言ってしまう。職場でも、家庭でも、またときには子どもの預け先に対しても、気兼ねして「すみません」と謝り続ける女の私たち。これは私自身が仕事や家庭を両立しようとしている中でついてしまった口癖です。

矢野 香さん

働く女性たちと接していると、謝り続けながら小さくなって生きづらそうな姿が目に付きます。「やりたいことを実現する」「なりたい自分になる」という最も大切なことができないまま人生を諦めてしまっているのです。私たちはただいろんなことを両立しようと頑張っているだけなのに、なぜこんなに生きづらいのでしょうか。

それは、「自己呈示力」を発揮できていないからだと私は考えています。

「自己呈示」とは心理学の用語で、「他者から特定の印象で見られることを目的として行われる行動」のことです。つまり、他者に好印象をもってもらうためのスキルです。やりたいことを実現するためには、この自己呈示力で、周りの人に好印象をもってもらい、周りを味方につけてしまえばよいのです。

日本の働く女性たちは、「わたしはこうしたい」と、自分の意見や希望を遠慮せずにもっとはっきり言ってもいいのではないでしょうか。主体的にやりたいことをもち、それを実現したいという意思=「ワガママ力」をもってほしい。ただ、それが単なるわがままとして相手に聞こえてはいけません。職場では「あいつ、女だと思って甘えている」と言われ、家庭でも「そんなことを言うならもう辞めたら」などと言われてしまいます。ここでいうワガママ力とは、わがままがわがままに聞こえないように伝える力です。ワガママ力を発揮できれば、仕事とプライベートを両立しながらやりたいことを実現し、自らキャリアをつくっていくことができます。